研究実績の概要 |
本研究の目的は,報酬制度に関するデータを手収集することにより,どういった種類の報酬制度が導入されているかを把握したうえで,それらが企業の投資行動などへ影響を及ぼしているのかを検証することである。 2021年度は,報酬契約とそれ以外の契約との関係を検討する論文を執筆した(中村亮介(2021)「日本企業の報酬契約のシフトと債務契約のデザイン」『會計』第200巻第3号,68-80頁。)。そこでは,報酬契約がリスクテイク行動を促すことを所与とし,債務契約と報酬契約の関係にフォーカスすることで,そこから生じるであろう債権者の富の減少をどのように防ぐかを検討した。そのためには,①報酬契約に関する情報開示を拡充し,債権者が事前に経営者のリスクテイクの確率を見込むことができる環境を整備すること,②債務契約締結後のリスクテイク確率の変化に対応するため,パフォーマンス・プライシング条項を取り入れること,③経営者による利益調整のインセンティブを抑制するため,純資産維持条項に利益エスカレーターを取り入れることを提案した。 また,関連研究として,金融機関へ実施したアンケート調査をもとに分析した結果を掲載した論文(Kochiyama, T., R. Nakamura, and A. Shuto (2021) "How Do Bank Lenders Use Borrowers’ Financial Statements? Evidence from a Survey of Japanese Banks," CARF F-522.)を公表した。さらに,財務制限条項でなぜ,経常利益がよく用いられるのかを検討した研究の報告を行った(中村亮介・河内山拓磨(2021)「日本企業の財務制限条項において会計利益が果たす役割」日本会計研究学会第80回全国大会,九州大学。)。
|