研究課題/領域番号 |
21K01827
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
眞鍋 和弘 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 准教授 (40509915)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 財務会計 / 保守主義 |
研究実績の概要 |
申請者は予備的研究において、無条件保守主義の尺度としてGivoly and Hayn (1990)およびBeaver and Ryan(2000)などの尺度を用い、また条件付保守主義の尺度としてBasu (1997)、Khan and Watts (2009)、および Balakrishnan et al. (2016)などの尺度を用いてきた。しかし、先行研究によってこれらの尺度に問題点が指摘されていることから、令和3年度はBall and Shivakumar (2005)およびBall and Shivakumar (2006)などの保守主義尺度なども含めた各保守主義尺度の特性を明らかにするとともに、複数の尺度を統合することにより信頼性の高い指数の開発を試みた。 研究実績として、Ball and Shivakumar (2005)が提案する保守主義尺度の問題点を明らかにし、閾値回帰(Threshold Regression)によりそれが解決できることを確認した。 申請者は予備的研究において、差の差の分析および固定効果法などを用いて因果推定のパイロットテストを行ってきた。これらの方法は通常のクロスセクショナル推定に比べて、より因果関係に接近できるなどのメリットもあるが、標本に関する制限や、統計上の仮定の追加など問題点も指摘されている。そこで、令和3年度は会計データを用いた因果推定に関するシミュレーションを通じて、各推定方法の有効性を検証した。 研究実績として、上記のBall and Shivakumar (2005)の修正モデルと因果推定を用いた研究成果を令和4年6月の日本会計研究学会中部部会において報告をおこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の主要な研究課題は多くの問題が指摘される保守主義尺度を考察し、その問題点を修正することにあった。実績の概要に記したとおり、Ball and Shivakumar (2005)モデルの修正を行ったことは当初の計画どおりである。しかし、その他の適時損失認識の保守主義尺度の問題点の解決には至っていない。残された研究期間にそれらの問題も取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに金融危機を主題とした主要な会計研究のサーベイを終えているが、ファイナンス分野における金融危機と企業行動の関連性を主題とする先行研究に関するサーベイは必ずしも十分ではない。そこで、今年度(令和4年度)は、これらの論文を精査するとともに、実証モデルを構築する際のコントロール変数を熟慮する。またこれを受けて、実証分析に用いるデータベースを構築する。 また、可能であれば、令和5年度に実施予定の会計保守主義と資金調達摩擦の関連性について検証する。具体的には、先行研究によって主張されている資金調達コスト、デフォルト時の資金回収率、経営者のモニタリングに対する会計保守主義の影響を因果推定の方法により検証する。また同様に、会計保守主義と投資活動の関連性について検証する。具体的には、不採算事業の存続に対する会計保守主義の影響などについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID19)の影響により、研究会や学会への参加が制限されており、当初の予定通りの研究が実施できていないことが理由として挙げられる。令和4年度以降には研究会や学会の多くが対面で再開するため、そのために資したい。
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