研究課題/領域番号 |
21K01846
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
金光 淳 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (60414075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 現代アート / 芸術祭 / 認知ネットワーク分析 / アーチスト調査 / 協賛企業調査 / 観客調査 |
研究実績の概要 |
コロナ禍とその結果進んだリモートシフトによって地域での生活、労働に関する価値観が大きく転換しつつあるウィズコロナ社会において、アート・フェスティバルは新たな社会のビジョンの創出において重要な役割を果たしうる。しかし、アート・フェスティバルに関与するこれらのアクターの間には、肝心の芸術祭のコンセプトの理解において「認知的ズレ」がみられることがあり、2018年の「あいちトリエンナーレ」では、一部観客とアーチスト、開催自治体の間で大きな「ズレ」が顕在化し、これが大きな「裂け目」を作り出し、アーチストのボイコットや一部作品の展示中止という事態に追い込まれ、「表現の自由」や芸術祭の意義について大きな議論を呼ぶこととなった。 本研究はアート・フェスティバルに関与する5アクター(プロデューサー=キュレーター、参加アーチスト、観客、主催自治体、協賛企業)が、芸術祭の基本的な理念、コンセプトに関してどのように認知し、それが各アクターの間でどのように異なっているのか(一致しているのか)を明らかにすることである。2019年の「あいちトリエンナーレ」で見られたようなコンセプトの認識の違いが今回はどのようになっているのかを5つのアクターに関する質問紙調査などで計量的に明らかにし、芸術祭の成功とコンセプトの一致、不一致との関係について探索する。 2021年度は「あいちトリエンナーレ」が名前を変えた国際芸術祭「あいち2022」の基本的なコンセプトでもあるミニマリズム、コンセプチャル・アートに関する文献調査、美術史的研究、美学理論の研究を中心に行い、2022年度のアーチスト調査の下準備をおこなった。国際芸術祭「あいち2022」の出展アーチストが発表されてからは国際芸術祭「あいち2022」の下調べを開始し、参加アーチストに関する情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともと調査に向けての準備的作業、理論的研究を行う予定であり、おおむね予定通り実行することができた。特にミニマリズム、コンセプチャル・アートに関する文献調査、美術史的研究、美学理論の研究を行うことができたことは調査票の設計に生かすことができると思われる。 また参加アーチストに関する下調べを十分行うことができた。特に参加アーチストについての詳細なデータベースを作成しており、これは調査票を送付する際に利用できる。一方でコロナ禍の収束が見られないなか、予定していた現地での観客調査はオンライン中心に切り替える必要を考慮し、サンプリング方法などの技術的な検討を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
国際芸術祭「あいち2022」において、5種類のアクターに関して質問紙調査が実施される。そのための設問づくりとアンケート用 紙の作成と印刷、送付、オンライン調査票の作成などの一連の事務的な作業が行われる。具体的にはアート・フェスティバルの関与アクター に対して、芸術祭の基本コンセプトを根とし、そこから放射状に連想されるキーワードを記入してもらう形式の連想ネットワーク調査を行う。次のような5種類の調査が実施される。 1)プロデューサー調査: 芸術祭のプロデューサーに対してインタビュー調査を行う。2)アーチスト調査:新・国際芸術祭に作品を出展するアーチストに質問紙を電子メールで送付して調査を依頼する。海外のアーチストに関しては英語で行う。100人ほどにのぼる。3)協賛企業:芸術祭の協賛企業に関しても電子メールにより質問紙を送付する。50社ほどにのぼると想定される。4)観客調査:現地調査からオンライン調査に切り替えたため観客のサンプリングのためInstagram投稿者やTwitterによるサンプリングを行う。 5)自治体調査:関係する愛知県の自治体(3から4市)の担当部署に質問紙を送付する。 観客調査において最も困難が予想されるので、開催自治体に調査への協力を依頼する工夫も必要になってくると思われる。
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