近年、身寄りのない高齢者を対象にした身元保証などの新しいサービスが登場し、一部の居住支援法人も、こうしたサービスを提供している。政府がその実態の把握に乗り出したことで、「身寄り問題」がクローズアップされた。イギリスの社会人類学者S・ウォルマンの資源システム論にもとづくならば、身寄り問題は、「構造的資源」(土地、労働、資本)の不足にとどまらず、それらを手に入れ、使いこなすための「編成的資源」(時間、情報、アイデンティティ)が欠けることによって生じる。地域福祉の政策化において、実体的給付を重視する「課題解決型支援」と、手続的給付を重視する「伴走型支援」が対比されてきたが、これについても、前者が構造的資源に、後者が編成的資源に重点を置いたものとみることができる。 身寄り問題の解決策として、支援の実践者からは「家族機能の社会化」が提唱されている。では、「介護の社会化」の延長線上に、家族機能の社会化を構想することは可能だろうか。資源システムの視点からみれば、介護保険制度による社会化は、あくまでも構造的資源の提供にとどまる。家族機能の社会化は、介護の社会化とは異質な取り組みとして考える必要がある。ここで注目したいのは成年後見制度である。同制度が対象にする財産管理と身上監護は、編成的資源の提供を志向する。居住支援と成年後見の接近についての予備的な論考を発表し、新たな研究課題を設定できたことが、今年度の主要な成果である。
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