研究課題/領域番号 |
21K01863
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
大野 光明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (80718346)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベトナム反戦運動 / 沖縄 / 反戦兵士 / 留学生 |
研究実績の概要 |
本研究は、沖縄に駐留した米軍兵士によるベトナム反戦運動について、その形成から終焉までの歴史的過程とその要因、沖縄や日本における地元住民や反戦運動との相互作用のありよう、日米両政府や米軍当局、軍隊内の制度による兵士運動への対処のプロセスなどの視点から検証するものである。 2022年度は沖縄、東京、サンフランシスコなどでの資料調査とインタビュー調査を実施することができた。 調査内容としては、一つには1970年から1971年に米軍嘉手納飛行場所属の黒人兵が中心となって発刊していた反戦地下新聞『Demand for Freedom』の内容と編集のプロセスと体制についての調査と分析を進めた。黒人兵たちの執筆活動を沖縄のジャーナリストや労働組合、アメリカ民間人反戦活動家が支援していたことが明らかとなった。その内容については、兵士の軍隊内での人種差別と抑圧の経験だけでなく、黒人兵が共鳴していた米国内外の反帝国主義的な運動や思想が紹介されていたことが分かった。分析結果の一部を日本社会学会大会(2022年)およびAssociation for Asian StudiesのAnnual Conference(2023年)で発表し、参加者より有益なコメントをいただいた。 二つめに、反戦兵士あるいは厭戦感情をもつ兵士たちに対し、さまざまな支援活動を行っていたPacific Counseling Service(PCS)について、沖縄で活動を立ち上げていった過程について調査を行った。その結果、沖縄コザでのPCS事務所の立ち上げをアメリカ人留学生が担っていたことが明らかとなった。研究成果として、論文「アメリカ人留学生のベトナム反戦運動 太平洋を横断する運動空間のなかの沖縄」(大野光明・小杉亮子・松井隆志編『越境と連帯 社会運動史研究4』新曜社、2022年)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外での資料調査とインタビュー調査を予定通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き日本と米国における資料調査とインタビュー調査を行う。兵士たちのベトナム戦争と軍隊での経験に内在した考察と分析を進めたい。また、反戦兵士の運動は沖縄だけでなく、米国内や世界各国で広がりをみせており、これらに対して、米軍はどのような対処を行っていったのか、ベトナム戦争後の政策転換も含めた考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の調査を2023年度に延期した。来年度にインタビュー調査のために使用する予定である。
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