本研究は、社会問題の解決を目的とするクリティカル・ディスコース分析(CDA)のアプローチを用いて、社会問題を取り扱ったテレビニュースとテレビドキュメンタリーを分析し、社会問題に関する考え方の枠組みが、テレビのニュースやドキュメンタリーのディスコースによってどのように構築されているかを解明することを目指したものである。 令和5年度は、研究の第3段階として、令和3年度および令和4年度に行なった分析結果を検討し、テレビニュースとテレビドキュメンタリーのディスコースの言語的要素と映像などのパラ言語的要素との相互作用によって、どのように特定の考え方が作り出されているかを詳細に検討した。 分析・考察の結果、テレビニュースのディスコースが、取り上げている社会問題について、政府の政策を支持する考え方の枠組みを構築していること、また、その枠組みが「政策に対する反対意見の軽視」「目的を根拠とした承認」「具体性による肯定的評価」「言及しないことによる前提化」「政策に責任のある人間の存在や政策によって影響を受ける人間の存在の背景化」「出来事の因果関係の時間的・空間的切り取りによる問題の矮小化」などの仕組みによって構築されていることを明らかにすることができた。 さらに、同時期に同様のテーマを政策に反対の立場を取ってきた人々の視点から見たドキュメンタリーのディスコースと対比することで、ニュースを問題の本質を捉えたものにしていくための手がかりを得ることができた。
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