研究課題/領域番号 |
21K01868
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移民国 / ドイツ / 移民政策 / 難民危機 / 統合政策 / ナショナル・アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本年度はコロナ禍によりドイツでの資料収集が実施できなかった。そのため,研究は主に,日本で入手可能なオンライン上の情報を用いて行わざるを得なかった。しかしながら,オンラインで得られる情報もかなりのもので,2010年代以後のドイツにおける移民・難民政策の変化をほぼ把握することができた。 まず,公式統計から,2013年以後ドイツに入国する移民の数が増加していることがわかった。その結果,1990年代後半からほとんど変化していなかったドイツにおける外国人の数は,2013年以降上昇に転じていた。それは,ドイツが高度専門職移民の受け入れを積極的に行った結果であり,2015年の難民危機はそれに拍車をかけていた。2019年には「専門職移民法」も可決された。このようなコロナ禍前の一連の変化は,ドイツが本格的に「移民国」に変化したことを示している。それはドイツが,移民受け入れの段階から「統合」のための政策に移民を組み込むようになったことによく現れている。これまで別々に行われてきた,移民受け入れと移民の統合とが,受け入れ時点から結び付けられるようになったのである。その変化のきっかけになったのが,2015年の大量の庇護請求者の入国であった。 このような「移民国」への変化はまた,右翼勢力による反移民の動きも活発化させている。しかし,こうした一連の流れがドイツの国民的自己理解,すなわち「ナショナル・アイデンティティ」にどのような変化をもたらしたのかについては,まだ研究・分析が進んでいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により,ドイツへの渡航ができなかったことが研究の進捗を遅らせる最大の原因である。しかし,オンラインによって得られる政府系機関の情報,シンクタンクや研究所の報告書,研究者の論文は入手可能であり,それを通じてコロナ禍以前のドイツの移民政策の変化はそれなりに把握できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,オンラインの資料やメディア情報をもとに近年の移民・難民政策の変化を追っていくほか,今後はメールのやり取りにより,政府機関に質問を行い,必要な情報を入手する努力を行う予定である。 また,コロナ禍による移民政策の変化についても調べ,コロナ禍がどのような影響を与えているのかも明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりドイツ渡航ができなかったことが理由。次年度はドイツへの渡航を実施したい。
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