研究課題/領域番号 |
21K01872
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
竹下 修子 愛知学院大学, 文学部, 教授 (60454360)
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研究分担者 |
石川 義孝 帝京大学, 経済学部, 教授 (30115787)
花岡 和聖 立命館大学, 文学部, 准教授 (90454511)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヘテロローカリズム / 居住パターン / 外国人居住者 / エスニックグループ / 国勢調査 |
研究実績の概要 |
総務省統計局から提供を受けた2010年、2020年国勢調査個票データと、インタビュー調査に基づいて、千葉県のアフガニスタン人、神奈川県のラオス人、三重県のボリビア人、愛知県のトルコ人の居住パターンを検証した。その結果、以下の3点が明らかになった。 第一に、大都市圏の中心市に集住するという従来の移民の居住地選択とは異なり、千葉県のアフガニスタン人は、ヤードの集積地である四街道市や佐倉市といった郊外の小・中都市に集住している。彼らの居住地は空間的に凝集しているが、ひとつのコミュニティとして社会的に結束しているわけではない。空間的近接が、必ずしも結束したエスニック・コミュニティを構築する要素ではないことを示している。 第二に、神奈川県のラオス人、三重県のボリビア人、愛知県のトルコ人は、小・中都市に広がるノーダル・ヘテロローカルな居住パターンを示している。上述した小・中都市は、東京大都市圏や名古屋大都市圏の郊外に位置しているので、中心市(特にそのインナーシティ)に当初は集住し、その後に郊外に分散していくことを想定した空間的同化論は、本研究で取り上げた小規模外国人集団の事例については妥当しない。ホスト国である日本への流入直後から、大都市圏の郊外に居住している。 第三に、ノーダル・ヘテロローカルな居住パターンをとるラオス人やボリビア人のコミュニティは分節化しているが、アフガニスタン人のように、集住していてもコミュニティが分節化していることもある。いずれの居住パターンであっても、彼らはSNSを通して海外に住む親族と頻繁に連絡を取り合い、トランスナショナルなネットワークを形成し、強固な紐帯を維持している。以上のような知見は、本研究で対象としたエスニック集団の居住パターンが、ヘテロローカリズム論という枠組みからうまく説明されることを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、総務省統計局から提供を受けた2010年、2020年国勢調査個票データの集計・分析と、千葉県のアフガニスタン人、神奈川県のラオス人、三重県のボリビア人、愛知県のトルコ人、およびその関係者にインタビュー調査を実施した。これらから得られた知見に基づき、人口規模が小さなエスニック集団へのヘテロローカリズム論の適用可能性を広く検証し、日本におけるエスニック集団の居住パターンを説明する分析枠組みを構築した。以上は、当初の計画に基づいた作業であり、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
小規模外国人集団へのヘテロローカリズム論の適用可能性について論文にまとめ、『愛知学院大学人間文化研究所紀要』38号(2023年9月発行予定)に投稿する。この論文では、千葉県のアフガニスタン人、神奈川県のラオス人、三重県のボリビア人を研究対象にしている。さらに、ヘテロローカリズム論が日本における小規模外国人集団の居住パターンを説明できるかについて、英語論文を作成し、査読付英語雑誌に投稿する予定である。この論文では、前述の紀要論文で検討していなかった愛知県のトルコ人を事例に加えるとともに、当該外国人の2010年の居住パターンを地図化し、2020年と比較する。このほか、2023年7月開催のCongress of International Academy for Intercultural Researchで研究発表を行う。 さらに、2020年国勢調査個票データを用いて、ヘテロローカルな居住パターンをとる小規模外国人集団における結婚行動の比較分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査資料の整理・データ保存を2023年度に実施することにしたため。
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