研究課題/領域番号 |
21K01874
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
中田 英樹 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (70551935)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国民国家統合 / 移民 / 外国人排斥 / グローバリゼーション / 新自由主義 |
研究実績の概要 |
コロナ禍により、(特にラテンアメリカの)現地調査が極めて困難であった。国内の図書館などの公的機関への外出も控えざるを得なかった。したがって2021年度の前半は、自宅で自粛をしながら購入書籍やインターネットを利用しての資料収集などの作業に従事した。 これらをもとに理論的作業を行い、それをまとめ、11月に日本村落研究学会にて学会報告をおこなった。学会でのコメントなどを踏まえ、現在当学会へ投稿論文を執筆する作業を進めている。 また、おもに関西を拠点に、多くの弁護士や、研究者、通訳人、労働組合関係者、 NPO関係者、マスコミ関係者などから組織されている「マイグラント研究会」にて、メキシコの自動車産業の生産展開に関する発表をおこなった。 2021年の後半は、ラテンアメリカの国民国家(Nation States)の展開史と、そのもとでの民族解放(National Liberation)の関係について、B・アンダーソン『想像の共同体』やA・ネグリ&M・ハート『<帝国>』といった大きな枠組みでの諸研究に基づいた理論的な研究に従事した。これは2022年3月に明治学院大学国際平和研究所発行の『PRIME』にて、論文として公開した。 2022年1月から3月まで、メキシコにて現地調査をおこなった。ただし、オミクロン株でのコロナ禍状況下ゆえに、計画していた内容での現地調査は展開できなかった。具体的に述べると、メキシコシティ内に暮らす日系人や日本人に対する聞き取り調査が、戦争勃発も相まって、本研究テーマでの聞き取りを依頼することは日程的・倫理的に適切ではないと思われた。ただいっぽうで、メキシコシティ郊外の地域住民の紐帯が強い(貧困)居住区では、コロナ禍でも顔見知りのためにとくに気にすることなく、内容のある質的社会調査ができた。現在、持ち帰った情報をもとに考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年内は、コロナ禍ゆえに自宅での資料や文献をもとにした研究を展開したが、これは予想していたことであり、ZOOMなどでの発表機会を利用して研究成果を学会や、弁護士が中心となった研究会などで発表した。 ただ、本研究の海外調査については、きわめて大きな問題が発生しつつある。原因は二つある。コロナ禍の収束を待ったが、再びデルタ株でのコロナ禍により、夏期休暇中の質的社会調査が、国内外問わずできなかった。このことが、当初の計画がやや遅延した第一の理由である。これはコロナ禍が収束しても、この世界的な不景気のなか、(現状では感染への畏怖もあり)日本人に対する聞き取り調査依頼が、やりにくくなったということも含まれる。 また、2022年1月からは海外調査をおこなったが、戦争勃発により、新自由主義での資本主義のグリーバリゼーションの影響よりもむしろ、国民国家統合の問題に焦点を当てた質的調査になり、また、海外ももちろんコロナ禍が続いていたため、慎重に聞き取り調査などを展開せざるを得なかった。これがやや遅れた第二の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍や戦争の行方がわからない状態ではあるが、今夏にはメキシコとグァテマラへの現地調査を計画している。 当科研の申請時には、コロナ禍の負の影響は想定した計画を立ててはいたものの、戦争勃発は想定外であった。だが現在、グローバルな資本主義システムの展開が熾烈化するなかで、やはり国民国家(Nation States)の問題こそを、近代民主主義の問題としてより根底から考察する必要性への制止であると考えた。民族解放(National Liberation)と絡むことを新たに研究の軸に取り込みながら、申請時の研究の眼目をずらすことなく、議論のスキームを組み替えることで、戦争が続く現在の状況に呼応した研究を推進しようと方策を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる項目は、現地調査にまつわる「旅費」および、現地で購入する書籍(消耗品)や資料収集にまつわる複写費や郵送費(その他)といったものである。 22年度は、ラテンアメリカでは3回目の接種により、(とりわけメキシコなど)日本と比して格段に、公共スペースでの活動制限が緩和されているので、これら次年度使用額は、今年度の調査に必要だと考える。
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