研究課題/領域番号 |
21K01891
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
大岡 頼光 中京大学, 現代社会学部, 教授 (80329656)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 所得連動返還型奨学金 / リカレント教育 / マタイ効果 / 傾斜付き普遍主義 / 的を絞った補助金 / 給付奨学金 / 社会人学生 / パートタイム学生 |
研究実績の概要 |
1.骨太の方針2022を受け,所得連動返還型奨学金(ICL)の大学院での導入が検討されている。ICLに国民的理解を得るには,ICLで全国民に大学の学部教育を開く必要がある。国民の多数派は高卒以下で,高卒社会人の大学再教育(リカレント教育)にもICLを使えるようにすべきだ。 2. 豪州でICLはリカレント教育増加を妨げなかった。 3. 一方,イングランドはICLを導入したが,高年齢層の社会人学生が多いパートタイム学生を激減させた。①ICLを使える対象を絞り,普遍主義を取らなかった,②学費を上げたのに,給付奨学金を廃止し,ICLだけにしたからだ。生活費ローンの効果は限定的で,給付奨学金を英国議会や財団が勧告した。 4.豪州のパートタイム学生の入学者は漸増傾向だ。授業料を廃止したアイルランドと豪州の比較研究も確認した。 5.日本のICL制度の方向性を論じた。①ICLの年収要件を外し,全員が使える普遍主義でICL制度への支持を増やす。②低所得層への支援を傾斜配分的に厚くする「傾斜付き普遍主義」を採用する。貧しい者はますます貧しくなる」マタイ効果の悪循環を断つため,低スキル,低所得層への「的を絞った補助金」=給付奨学金の拡充をICLと共に検討する。③遺産からICL債権を回収することで,選挙で多数派を占めていく高齢者もICLを利用できるようにする。遺産からの債権回収のためには,日本学生支援機構から国税庁に,ICL債権回収業務を移管していく必要がある。④外部効果を概算し,ICL債権を回収できなくても,高齢者が補助金としてICLを利用できる方法を探る。 6.今後の課題を確認した。①源泉徴収方式の必要性からは,日本学生支援機構と国税庁の統合改革の検討が必要である。②女性の低収入への対処法の問題(返還が始まる年収閾値を低くか,働き方改革が先か)。③ICLと卒業税のどちらが望ましいかという問題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナのために、2021年度に計画していた海外の現地調査に出かけることができなかった。そのため、コロナ前に立てた当初の計画よりも、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究計画の最終年度(2023年度)後半から1年間、いわゆるサバティカル休暇にあたる制度を利用できることになった。 この休暇を最大限に活用し、集中的に海外の現地調査を実施し、遅れをある程度挽回する。 それとともに、研究計画の延長を申請し、サバティカル休暇の後半(2024年度前半)にも海外での現地調査を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナのために、2021年度に計画していた海外の現地調査に出かけることができなかった。そのため、コロナ前に立てた当初の計画よりも、研究費の使用がやや遅れたことが、次年度使用額が生じた理由である。 3年間の研究計画の最終年度(2023年度)後半から1年間、いわゆるサバティカル休暇にあたる制度を利用できることになった。 この休暇を最大限に活用し、集中的に海外の現地調査を実施し、遅れをある程度挽回する。 それとともに、研究計画の延長を申請し、サバティカル休暇の後半(2024年度前半)にも海外での現地調査を実施し、使用する計画である。
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