研究課題/領域番号 |
21K01894
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
M・R・D Carlos 龍谷大学, 国際学部, 教授 (90335414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フィリピン人英語教師 / 在留フィリピン人 / 多段階的国際移動 / 外国人の退職後の居住地選択 / コロナ禍 / フィリピン人の国際移動 |
研究実績の概要 |
初年度の研究実績は以下である。 1. 在留フィリピン人たちが英語教師の仕事に着く理由は高収入と高い自己評価のためである。永住定住者の多くは英語教師になることが日本社会での地位の向上の重要な手段であると認識している。一方、就労ビザ所持者においては低い斡旋手数料、日本文化の魅力、コミュニケーションスキルや英語能力の活用が就労の理由である。また、彼らにとっては日本が多段階国際移動における最終地になる可能性が高い。しかし、彼らは契約雇用に伴う不安、限定的なキャリアー形成、日比両側に就労規制・政策がないという課題を抱えている。この成果の一部を国際学会で発表した。さらに、2022年夏に2つの審査付き国際学会にも採択されている。 2. 在留フィリピン人の現状と課題(全般)を把握するためのアンケート調査において、退職後の希望居住地について尋ねた結果、在留資格を問わず多くの在留フィリピン人は退職後のことについては不安に感じていないこと、3人に2人は退職後をフィリピンで過ごしたいこと、退職後の居住地の最も重要な決定要因は「家族」であるが、人によっては家族の定義と範囲が異なることが判明した。この結果を審査付き学術雑誌(2021年12月刊行)に紹介した。 3. 調査の結果、在留フィリピン人女性でコロナ禍によって仕事を失ったりしたものや、子育てを終え経済自立を目指すものが多く、彼らの一つの職業選択として英語教師がある。彼女らのコロナ禍における脆弱性と困難への対応をまとめて、日本フェミニスト経済学会の全国大会で発表し、学会誌に投稿した(2022年夏刊行予定)。また、英語教師になるためのハードルは高く、彼女らにはコミュニケーション能力や英語を教えるスキルのほかに、ICTを用いた教授法が求められている。本研究においては、ワークショップを奈良市で実施し、彼女らに英語の教え方やICTの活用方法を紹介・実践した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、東南アジアでのフィールドワーク調査が主な活動となっているが、コロナ禍のため全く実施できていない。2021年度に日本国内(京都府、大阪府、広島県、愛知県、福岡県)及びオンラインでの在留フィリピン人全般を対象にした予備調査と在留フィリピン人英語教師へのインタビュー調査を中心に行った。今年度は可能な限り、タイとベトナム、そして、ブルネイとフィリピンでのフィールドワークを実施する予定である。 なお、ミャンマーでのフィールドワークを予定していたが、政治情勢とコロナ禍でフィリピン人教師らのほとんどが仕事を失いフィリピンへの帰国または他国への移動を余儀なくした。そのため、ミャンマーからフィリピンとブルネイ(検討中)へとフィールドワーク先を変更する。しかし、このような変更は本研究の目的に悪影響はなく、むしろ多段階的国際移動の議論をより充実させるものになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、東南アジアと日本を受け入れ国として働 いているフィリピン人教師の移動行動、とりわけ多段階的国際移動における就労先(先進国/高 所得国/Northか途上国/低中所得国/Southか)の選択に関する実証研究を行う予定である。プロジェクト2年目の今年度には、以下の研究活動を行う予定である。 1. 文献調査 コロナ禍の影響もあり、東南アジアおよび日本のフィリピン人教師の受け入れ政策と受け入れ状況が変化しつつあるので引き続き新聞や関連のウェブサイトなどからも情報収集を行う。 2. フィールドワーク調査 東南アジアで働いているフィリピン教師の属性・特徴、海外就労のきっかけと動機、就 労先の選択、移動ルート(経路・パターン)、就労や生活状況とそれに対する満足度、将来の計 画、コロナ禍の影響、およびこれらに対する課題を明らかにするための現地アンケート調査や インタビューを現地の協力研究者と一緒に実施する。また、現地の外国人教師受け入れ政策の課題も当事者(学校の経営者、フィリピン人教師、学生らなど)からの聞き取り調査も行う。そして、プロジェクトの最終年度に向けて、集めたデータを適切な分析ソフト(SPSS,NVIVO)を用いて処理する。 3. 成果発表 本研究の成果報告を2つの国際学会(両方審査付き)- Nordic Migration Research Conference(デンマーク、2022年8月17日-19日開催)および The European Consortium for Political Research(オーストリア、2022年8月22日-26日開催)で発表することがすでに決定されている。学会の参加者のコメントやフィードバックを踏まえて論文にまとめて、国際学術ジャーナルでの投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、東南アジアでのフィールドワーク調査が主な活動となっているが、コロナ禍のため全く実施できていない。 2022年度には、現地の協力研究者とともにタイ・ベトナム・フィリピンとブルネイ(検討中)でフィールドワークを行うのでそのために予算を使用する予定である。さらに、海外の研究協力者を日本に招聘し、フィールドワークを実施する計画も立てている。
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