研究課題/領域番号 |
21K01894
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
M・R・D Carlos 龍谷大学, 国際学部, 教授 (90335414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教師の国際移動 / フィリピン / 多段階的国際移動 / bordering practices / タイ / フィリピン / ブルネイ |
研究実績の概要 |
2023年度の主な研究実績は以下である。 (1) The Migration Conference Hamburg (ドイツ、2023年8月)での口頭発表とThe Migration Conference Selected Papers (2023年12月)での論文投稿 本報告では、タイとベトナムのフィリピン人教師を事例として取り上げて、これらの受け入れ国における国際移動の管理とbordering practices (隣の国に行き在留資格の更新を行うこととその方法に関する習慣)のあり方を検証し、これらは教師たちの目標達成を促すだけでなく、時には制約していたかについて考察した。 (2) 龍谷大学国際学部研究会での口頭発表 本報告では、ブルネイのフィリピン人教師らの現状と課題、そして、今後ブルネイで働き続けたいか、それとも帰国または第三国に移動したいかの願望 (aspiration)について考察した。彼らの多くはブルネイが居心地の良い就労先であるためできるだけ長く働きたいと望んでいるが、ブルネイの法律では、外国人労働者は55歳までしか働けない。このような制約はフィリピン人教師の願望とキャリアパスの再構築をもたらしている。今後、これらの4カ国から得たデータを踏まえ、aspirations-capabilityの理論を分析の枠組みとして用いて、フィリピン人教師の国際移動行動を考察する予定である。 (3) 英国アングリアラスキン大学リサーチセミナーでの口頭発表 本報告では、フィリピン人看護師の多段階的移動を中心に展開しており、その中でフィリピン人看護師に多く見られる「看護師から英語教師」という職業転換の傾向と原因、そして、今後のフィリピンにおける看護師不足との関連について説明した。今後、このような職業間移動を含んだ多段階的移動の理論の再構築を試みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍と代表者の健康状況のため、本プロジェクトの実施はやや遅れているが、おおむね計画の内容通り実施することができている。 予定では、ミャンマーを調査対象国にしていたが、パンデミックと政治情勢の悪化のため断念せざるを得なかった。ブルネイは日本と同様に「North-South migration」の一つの例であり、1980年代以降多くのフィリピン人教師を受け入れている。ブルネイの受け入れの歴史が長いこと、日本との比較ができることを理由に2023年度には、この国を調査対象国として加えた。また、本研究では、外国人研究協力者2名及び大学院留学生(現地案内兼通訳者)に関わっていただいたため、現地調査がスムーズにできたと思われる。 本研究で計画している現地フィールドワークが完了しましたので、残りの1年(延長)には、主にデータの分析と考察、研究成果に関する論文執筆と口頭発表、国際ワークショップを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトが終了するまで後1年となったが、データの分析と研究成果のまとめと報告に充てたいと考えている。その詳細は以下である。 (1)国際学会での口頭発表 代表者はAssociation of Asian Studies AAS-in-Asia国際学会(2024年7月9日から11日まで、インドネシアガジャマダ大学にて開催)にパネルセッション「Non-native English Teachers in East and Southeast Asia: Migration, Identities and Professional Aspirations」を計画し採択された。そこで、代表者カルロスと研究協力者のネリア・バルゴア博士(ミンナダオ州立 イリガン工科大学教授)それぞれが発表する予定である。 (2)国際学術雑誌での論文投稿 フィリピン人教師のアジアにおける「南南移動」(タイとベトナム)と「南北移動」(日本とブルネイ)に関する論文の執筆と国際ジャーナルでの投稿を目指す。 (3)国際ワークショップの開催 在日フィリピン人教師や本テーマに関心を持つ研究者と実務家を集めて、本プロジェクトの研究成果を報告し、フィードバックを得るための国際ワークショップを年度内に開く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍及び代表者の健康状況のため、学会での口頭発表や論文投稿などの成果の公表とフィードバック作業がまだ十分に実施できていない。2024年度の助成金を(1) 国際学会での口頭発表にかかる旅費等(約50万円)、(2) 国際ワークショップにかかる諸費用(約40万円)、(3) 学術論文の作成と学術雑誌への投稿にかかる費用(約20万円)に使用する予定である。
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