研究課題/領域番号 |
21K01901
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
秋谷 直矩 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (10589998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エスノメソドロジー / ガーフィンケル / グールヴィッチ / 現象学 / ゲシュタルト心理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、エスノメソドロジー草創期において、その創始者であるガーフィンケル(とそのフォロワー)に対してグールヴィッチの知覚の現象学がいかなる影響を与えたのかを明確化することである。 そのために、本年度前半は、ガーフィンケルの既刊行・未刊行のテキストとグールヴィッチのテキストを中心に文献調査の準備作業を行った。未刊行のガーフィンケルのテキストは当時のタイプライターで作成した紙媒体のものが大半であるため、入手済みのものについてはスキャンとテキストデータ化の作業を進めた。現状入手可能な本研究に関連するテキストのスキャンとテキストデータ化の作業は8割程度完了し、分析作業を進める基盤は整いつつある。 本研究にとって非常に大きな出来事は、本研究の検討対象であるグールヴィッチのテクストのガーフィンケルの「意図的な誤読」について取り扱ったガーフィンケルの大学院ゼミの音声記録とその解説論文(Garfinkel 2021; Eisenmann and Lynch 2021)が本年度公開されたことである。それらを踏まえて、本年度後半は、90年代以降のガーフィンケルがグールヴィッチに直接的・間接的に言及する箇所とグールヴィッチのテキストの該当箇所での議論の対照表の作成も進めた。現在その分析作業を進めている。 併せて、ガーフィンケルのこれまでの議論を整理し、より詳細に理解する作業も進めた。こちらについては、本年度に刊行したいくつかのテキストや学会発表に適宜組み込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初予定していた文献調査の基盤を確立する作業をおおむね完了させることができた。 また、本研究において非常に重要な意味をもつ、グールヴィッチのテキストのガーフィンケルによる「意図的な誤読」を中心的に取り扱った大学院ゼミの録音の書き起こしテキストが公開されたことで、それまで推論に留まっていたいくつかの事項について、テキスト内在的に検討することが可能になり、すでに入手済みの既刊または未刊行の文献調査に進捗が見られた。 以上の理由により、本研究は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、90年代以降のガーフィンケルのテキストと、そこで直接的・間接的に参照されているグールヴィッチのテキストの比較検討作業を進めることで、そこでのガーフィンケルの「意図的な誤読」の方法について一定の見立てを得ることができた。本年度はそこで得られた知見についての成果発表を進める。 次年度は、本年度の作業と並行して、90年台以前のガーフィンケルのテキストの分析作業を進め、そこからグールヴィッチの影響の如何を検討する。そこで得られた成果は成果発表の準備を整え、随時公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本研究の分析対象となるテキストのうち、当時のタイプライターで作成された紙媒体の資料の電子ファイル化作業とテキストデータ化作業を進め、入手済みのものについてはおおむね完了した。しかし、まだ未入手の資料やテキストデータ化が完了していないものがある。これらについての入手に関わる費用やテキストデータ化の費用が必要であるため、本年度の予算から必要と見込まれる分を繰り越すこととした。
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