石田雄『日本の政治と言葉 下 平和と国家』(1989)を主要なベンチマークとして、計読( (テキストマイニング)による日本国家の歴史を記述した。1)国立国会図書館(NDLサーチ)に登録された1860年から1926年のあいだに刊行された図書のうち、題目に「国家」の文字列を含むものの題目と目次を抽出し、データセットとした。2)初歩的な分析の結果から、データセットを「憲法発布期」、「日清日露戦争期」、「大正デモクラシー期」に区分した。3)当初、「国家」は専ら機能的実利性により特徴づけられた。戦勝などによりその一定程度の達成が確認されると、「国家」の存立理由が再模索された。そのなかから生じるのが、「国家」の神権的理解だった。 本プロジェクトは書誌情報の計読(テキストマイニング)分析により、石田(1989)が提起した個々の諸論点に一定の傍証を提供した一方で、石田が19世紀後半から20世紀前半を貫く傾向として主張した〈国家と国民の区別と同一視が交互にあらわれる〉との日本国家史観については、それを支持する証拠を提供できなかった。代わりに本プロジェクトが提案したのは〈国家による国民の創成(憲法発布期)から国民の定着と自律(日清日露戦争期)へ、そして国民による国家の構想(大正デモクラシー期)へ〉という史観である。今後、資料の電子化が進展するにつれ、本主題はさらに深化するだろうが、本プロジェクトはその基盤整備をおこなった。
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