研究課題/領域番号 |
21K01914
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
杉浦 郁子 和光大学, 現代人間学部, 教授 (40637443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セクシュアリティ / ジェンダー / レズビアン・フェミニズム / クィア・スタディーズ / 語りのデータベース |
研究実績の概要 |
2022年度は、1990年代の首都圏でレズビアンのための活動を行った方にインタビューをし、その文字データと音声データを「レズビアン・デジタル・アーカイブス」で公開した。ウェブでの公開を前提にインタビューをする場合、そうでない場合と比べて、調査の依頼から実施、公開に至るまでさらにきめ細かい説明や配慮、多くの意思確認が必要であることを確認した。インタビューの内容は、「男性」が中心となって運営されていた団体のなかで「女性」がどんな活動を展開していたのかがわかる貴重なものとなっており、居場所作り、発信、電話相談支援など多岐にわたる活動の手法を記録することができた。 インタビューの実施、公開と並行して、ドキュメント資料(主にミニコミ誌)の収集に努めた。また、レズビアン・デジタル・アーカイブス内にミニコミ誌の所蔵情報を掲載するページを作り、公開した。さらに、いくつかのミニコミ誌の記事索引の作成も進めた。記事索引は、次年度以降、順次公開していく予定である。インタビュー・データのウェブ公開にまつわる技術的、倫理的、法的課題については、おおむね整理することができた。 以上のデジタル・アーカイブの成果は、立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会/カルチュラル・スタディーズ学会主催の講演会にて、「レズビアン・デジタル・アーカイブス」の試みと課題――〈女性〉の活動を記録し公開することの困難に注目して」と題して発表した。 また、東京大学駒場キャンパスSaferSpace(KOSS)主催の学術イベント「『レズビアン』の歴史――知、出会い、排斥」において、「1970年代から1990年代中旬の首都圏におけるレズビアン・コミュニティとアイデンティティ政治――ミニコミ誌上の実践から」と題した発表を行い、関連領域の歴史に関心のある研究者や聴衆と意見交換をする機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビューの実施および公開が当初の計画通りに進んでいない。配慮事項が多岐にわたり、時間をかけて丁寧かつ慎重に手続きを踏む必要があることが理由のひとつである。調査方法の説明の仕方には工夫の余地がありそうだが、倫理的な側面への配慮が最優先であると考えている。また、北米におけるレズビアン・フェミニズム研究などのレビューが当初の予定通り進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、1970年代から90年代までの期間にレズビアンの解放運動やレズビアン・コミュニティの維持に関わった人々へのインタビューを中心に研究を進める。2022年度に参加した学術イベントでの意見交換を通して、ドキュメント資料だけを用いて歴史を記述することの問題を再認識した。活動がおかれていた文脈やドキュメントには記録されていない経験を踏まえて歴史を記述するために、口述資料の収集に力を入れたい。 収集が進んだドキュメント資料に関しては、記事索引を作成しつつ、それぞれの資料の特徴や発行していた団体の概要をまとめ、考察する予定である。 北米におけるレズビアン・フェミニズムに関する文献研究に着手し、日本のレズビアン・フェミニズムの諸実践との比較考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会などがオンライン開催となったこと、インタビューの進捗が芳しくないことにより、旅費の支出が抑えられた。未使用額は調査地への旅費、インタビューの文字起こしにかかる費用として支出する予定である。
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