研究課題/領域番号 |
21K01919
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
定池 祐季 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (40587424)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 災害復興 / 生活再建 / 災害ボランティア / 災害文化 / 災害伝承 / 語り継ぎ / 記憶 / 追悼行事 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、国内外の被災地・未災地の比較研究を通して、被災地から他被災地へ、被災地から未災地への災害文化の伝承の系譜をまとめ、災害文化に関する理論的考察を深めることを目指している。 2021年度は本研究課題の初年度として、①被災地における集落再建案と人口動態に関わる文献・資料収集と②記録誌の内容分析に関わる文献・資料収集や、③コミュニティと災害文化の関係性を探るためのフィールドワーク、④災害復興や生活再建支援に関わるアクションリサーチに取り組んだ。特に③については、北海道奥尻島(1993年北海道南西沖地震被災地)・有珠山周辺地域(2000年噴火ほか、噴火常習地)・宮城県石巻市(2011年東日本大震災被災地)などでの継続的なフィールドワークを実施し、追悼行事や災害伝承・記憶の継承や防災教育に関する調査を行った。その際には、新型コロナウイルス感染拡大の影響でフィールドワークに大きな制限がかかる状況であったため、密にならない屋外での行事を中心に参与観察等を行った。加えて、④については、北海道胆振東部地震(2018年)被災地である厚真町において、災害復興や被災者支援を中心とするアクションリサーチに取り組んだ。 2021年度の研究成果の一部は、地域安全学会・日本災害復興学会・日本災害情報学会で口頭発表を行った。その中では、北海道胆振東部地震被災地における災害ボランティアの活動状況や、北海道厚真町における被災者支援体制の変化、新聞の内容分析に基づく「節目」報道について報告したほか、分科会やシンポジウムで北海道奥尻島や厚真町の事例報告を行った。 加えて、地域安全学会の共著論文では、石巻市で活動をするNPO法人による草の根アーカイブ活動を通して、被災空間の記憶継承について取り上げた。 そのほか、雑誌等への寄稿や研修会等を通して本研究で得られた成果の一部を紹介し、社会への発信を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、①被災地における集落再建案と人口動態や②記録誌の内容分析に関わる文献・資料収集と整理、③コミュニティと災害文化の関係性を探るためのフィールドワーク、④北海道厚真町を中心とする災害復興や生活再建支援に関わるアクションリサーチに取り組んだ。 このうち、①②は概ね当初の見通しどおりに資料収集と整理を進めており、次年度以降も継続する予定である。しかし③④については、緊急事態宣言など、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえて次年度以降に調査を見送らざるを得ない状況が複数回発生した。特に屋外で実施される行事の参与観察等については、先方との調整の上参加できたものも多いが、インタビュー調査については見送らざるを得なかった。そのことに伴い、現地調査の際に現地で収集予定であった①②の資料についても収集が遅れているものもある。 そのため、年度途中で研究方針の見直しを行い、当該年度の成果のとりまとめと発信については、厚真町を中心とする胆振東部地震被災地におけるアクションリサーチや新聞分析、奥尻島や有珠山周辺地域・石巻市などフィールドワーク等を遂行できた地域に関する調査結果の整理と発信を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度以降も継続して①被災地における集落再建案と人口動態に関する文献・資料の収集と整理、②記録誌の内容分析に関わる文献・資料の収集と整理、③コミュニティと災害文化の関係性を探るためのフィールドワーク、④北海道厚真町を中心に災害復興や生活再建支援に関わるアクションリサーチに取り組む。 このうち、③コミュニティと災害文化の関係性を探るためのフィールドワークと④厚真町を中心としたアクションリサーチは引き続き新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえながら柔軟に対応することになるので、訪問先の地域やインフォーマントとの丁寧な調整に努めながら、室内の行事の参与観察やインタビュー調査の実施を検討する。特に、2021年度訪問できなかった地域については2022年度中の訪問を目指す。 合わせて、これまでに取り組んできた新聞の内容分析の手法を発展させて、①被災地における集落再建案と人口動態②集落等の災害記録誌に関わる資料分析に取り組んでいく。 そして、本研究で得られた成果については学会発表や論文等の執筆を通して発信していくほか、執筆、講演・講義等を通して社会への発信も継続して行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は研究対象地域でのフィールドワークやアクションリサーチの実施にあたって、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえて次年度以降に訪問を見送らざるを得ない状況がたびたび発生した。特に対面でのインタビュー調査については見送らざるを得なかった。そのことに伴い、現地調査の際に当該地域で収集する予定であった資料についても収集が遅れているものもある。 次年度についても、調査対象地における①被災地における集落再建案と人口動態と②集落の災害記録誌の内容分析に関わる文献・資料の収集と整理、③コミュニティと災害文化の関係性を探るためのフィールドワークと④北海道厚真町を中心に①から③に関わるアクションリサーチを継続して実施する予定である。次年度使用額については、昨年度訪問ができなかった地域へのフィールドワークや対面のインタビュー調査を行うために活用する。
|