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2021 年度 実施状況報告書

ドメスティケーション論からみたゲノム編集の「自然さ」についての科学社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K01927
研究機関東京都市大学

研究代表者

大塚 善樹  東京都市大学, 環境学部, 教授 (10320011)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードゲノム編集 / 在来家畜 / 近代品種 / 遺伝子流動 / 自然さ
研究実績の概要

本研究はゲノム編集に代表される遺伝子改変育種による近代品種と地域で育成されてきた在来種との対比を通して,「自然さ」概念を検討するものである.作物の在来種の種子については,既に農業者や消費者による保全に関する研究が行われていることから,家畜の在来種を中心に近代品種との違いを研究者や農業者との関係の差として把握することを目指している.
初年度では,1960年代から畜産学者や獣医学者を中心とした研究グループが在来家畜研究会を組織して東アジア全域の研究を行ってきていることに着目し,定期的に発行されている同研究会の報告書の読解と会員へのインタビュー調査を開始した.同研究会は鹿児島大学農学部の林田重幸教授が1952年にトカラ列島の宝島で小形の在来馬(トカラ馬)を発見したことに始まる.そのため,研究開始当初はどこかに飼育されている純粋な在来家畜を見出してその性質を明らかにすることに主眼が置かれていた.しかし,東アジアでのフィールド調査を重ねることによって,すでに1970年代には,現在のドメスティケーション論に含まれる動物側の能動性,野生種との間の遺伝子流動,再野生化などの特徴が明らかになっていた.
これらのことより,アジアの在来種は均質で純粋な系統ではなく,多様でかつ可変的な家畜集団の総称であることが示唆された.このような在来家畜の成り立ちは,近代品種の延長線上にあると考えられるゲノム編集生物と在来種との本質的な違いとして認識されている可能性がある.以上の一部の研究結果について,東アジア国際環境社会学会第8回大会で口頭発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はゲノム編集に代表される遺伝子改変育種による近代品種と地域で育成されてきた在来種との対比を通して,「自然さ」概念を検討するものである.日本国内諸地域の在来種のうち,植物=作物についてはそれを保全する農業者や消費者の活動がすでに明らかになっている事例が多数見つかったため,本研究では動物=家畜に焦点を当てることとした.文献調査から,在来家畜研究会に着目し,同会報告書のレビューを通して,在来家畜とはどのようなもので,その保全にどのような意味があるかについて,まずは科学者コミュニティの中で明らかになっていることを整理している.さらに,同会の初期の会員2名,現在の会長1名の計3名にインタビュー調査を実施した.

今後の研究の推進方策

在来家畜研究会報告書および関連する論文の読解を進めるとともに,会員へのさらなるインタビュー調査を行う.現時点での仮説は,研究会発足当初は在来種を純度が高く均質であると認識していたが,東アジアでのフィールド調査から遺伝子流動や再野生化,継続するドメスティケーションの発見を通じて,むしろ多様性や不定性をアジアの在来種の特徴として理解するようになったのではないか,というものである.この仮説を軸に進めることと同時に,そのような認識の変化に基づいた在来種の保全の在り方についても研究者へのインタビューを通して実施する.また,日本国内で保全されている在来種の状況についても,自治体および農業者の関わり方について調査したいと考えている.

次年度使用額が生じた理由

報告を予定していた中国雲南省昆明で開催の国際学会(東アジア国際環境社会学会第8回大会)がオンライン開催となり,海外出張旅費が不要となったため.今年度以降も海外出張が可能となるかどうか見通せないため,国内での在来種の保護に関する現地調査を増やして,事例の拡充を図ることに充てたいと考えている.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Rethinking Agricultural Biotechnology from a Perspective of Local Livestock in East Asia: a Relational Concept of Domestication in the Post-anthropocentric Condition2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshiki Otsuka
    • 学会等名
      8th International Symposium on Environmental Sociology in East Asia
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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