研究課題/領域番号 |
21K01928
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
石原 俊 明治学院大学, 社会学部, 教授 (00419251)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 島嶼 / 疎開 / 帰還 / 離散 / 共同性 / 小笠原 / 大東 / 奄美 |
研究実績の概要 |
本研究は、先島諸島、大東諸島、奄美諸島、小笠原諸島(硫黄列島を含む)など、アジア太平洋戦争末期に強制疎開(強い疎開推奨を含む)を経験し、敗戦後も故郷に戻らなかった/戻ることができなかった、日本のいわゆる南方離島(沖縄本島とその周辺離島を除く)の人びとが、異郷でどのような共同性を培い、いかに生き抜いていったのかについて、比較歴史社会学的研究を進めるための基礎的な情報整備を実施するものである。 本年度は、コロナ禍に伴う緊急事態宣言・まん延等防止重点措置、およびそれに準じる離島自治体からの来島自粛要請のために、本務校の夏季休暇中および冬季・春季休暇中の現地調査は、すべて不可能になってしまった。一次資料収集も、各図書館・文書館・資料館の臨時閉鎖や来館制限のために、大きな制約を強いられた。 それでも、勤務先の部局長はじめ関係各方面の理解を得て、秋学期中の大学祭開催期間に、南大東島にて現地調査を行うことができた。現地で文献資料収集や踏査を行ったほか、戦時期に疎開を選択せず南大東島にとどまっていた数名の島民にインタビューを実施することができた。また、国立国会図書館、国立公文書館、防衛省防衛研究所史料閲覧室、都立図書館、各大学図書館などが制限付で開館している時期に、文献資料調査を重点的に実施した。 その結果、前科研プロジェクト「南方離島民の戦時・戦後経験の比較歴史社会学的研究」および本科研プロジェクトの初年度の調査研究成果として、共編著『シリーズ 戦争と社会』全5巻(岩波書店、2021~22年)や、論文「島嶼戦と住民政策―日本帝国の総力戦と疎開・動員・援護の展開」(『思想』2022年5月号、岩波書店)を公刊することができた。 また、本研究のアウトリーチ活動の一環として特筆すべきは、『朝日新聞』2022年2月8日朝刊の「ひと」欄に、「石原俊さん:硫黄島民の生活史を記録する」が掲載されたことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研プロジェクトの当初計画では、2021年度は大東諸島を重点調査対象とする予定であった。年度内の大部分の期間、南北大東村役場から来島自粛要請が発出されている状況下で、まさに針の穴を縫うように、本務校の大学祭期間中に、南大東島現地にてインタビュー調査と文献資料調査を実施することができた。これは、本務校の部局長らの理解と、現地の大東村役場職員の方がたのご協力があってのことである。 また、東京や関西における一次資料収集も、緊急事態宣言やまん延等防止重点措置に伴う各図書館・文書館・資料館の臨時閉鎖や来館制限のために、大きな制約を強いられたが、スケジュール調整に苦労しつつも、一定の成果をあげることができた。 北大東島の現地調査が実施できなかったことなど、当初計画からいくらか遅延している部分はあるものの、コロナ禍による調査研究活動への多大な制約や、上記「研究実績の概要」で述べたアウトプットをふまえるとき、当初想定した以上に十分な研究成果をあげることができたと確信している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も、コロナ禍やその他の事由による制約のなかで、当初計画をできるだけ達成するべく、尽力するのみである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
上述したように、コロナ禍に伴う緊急事態宣言やまん延等防止重点措置、および離島現地自治体からの来島自粛要請などにより、フィールドワークが制約を余儀なくされた。特に、予定していた北大東島での現地調査は、延期せざるをえなかった。こうした理由により、次年度使用額が生じた。
|