研究課題/領域番号 |
21K01929
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石井 香世子 立教大学, 社会学部, 教授 (50367679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 移民 |
研究実績の概要 |
今年度に出版された研究業績としては、東・東南アジアにおける女性移民の構造に関する論文(Sari K. Ishii 2023 "Remarriage migration of women in Asia: The case of Japan," International Migration, 61: 186-200)がある。本論文では、アジア諸国間の女性移民のプッシュ要因が、既存研究によって注目されてきたような経済に着目した構造(Hockschildが”Global Care Chain”と呼び、Parrenasの”international division of reproductive labor”と概念化したもの)以外にも、社会的構造からも説明できる点を指摘したものである。この社会的要素へ注目する視座は、当該科研費研究における「アジアにおけるジェンダー化された移民の流れ」の説明要員として、経済構造から社会制度へという理論的フレームワークを移転させる上で重要なものであると言える。本論文に続いて、近日中に、移民のプッシュ要因・滞在の継続要因を社会的な側面から説明する実証研究に関する論文が、出版見込みである。これら一連の論文が、本研究の最終成果物において、先行研究に照らした本研究の位置づけを明確にするための理論的なバックボーンとなっていくことが期待できよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、2022年度までの研究進行の遅延を補うに十分なほど、統計資料ならびにインタビュー調査が非常によく進んだ年度であった。具体的には、まず統計資料として、1940年代後半から1970年代にかけて、沖縄へジャズ・ミュージシャンおよびロック・ミュージシャンとしてやってきたフィリピン人エンターテイナー男性たちについて、琉球政府の出入国管理資料を発掘することができ、分析が進んだ。また、当時から現在まで沖縄に滞在するフィリピン人ミュージシャンの方々や、彼らと一緒に演奏した日本人ミュージシャンの方々に貴重なインタビューを実施し、記録を収録することができた。研究を計画していた当初、当時を知る方々(遺族)をフィリピンに訪ねて調査する予定だったものが、思いがけず記憶の正確さを誇る当事者たちに直接インタビューすることができたという今年度の調査結果は、望外の研究成果だった。また、在沖縄フィリピン人ミュージシャンたちの親族関係やコミュニティが密であったためか、彼らの子ども世代の方々へのインタビューからも、思いがけず多くの情報を提供していただくことができた。その結果、当事者(同業者)たちの記憶、子ども世代からの記憶、統計的資料と、史料を照合して、立体的な分析を進めることができたのも、今年度の大きな成果だったと言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度インタビュー対象者を通じたスノーボールサンプリングにより、まだ複数人のインタビューが予定されている。それらのインタビューを実施し終えた後、これまでの研究期間に蓄積してきた①先行研究が用いている研究フレームワークとの関係性の明示、②統計数値の分析結果、③インタビュー結果の分析結果、さらに④統計的な事実関係とインタビュー調査結果との照合結果をもとに、最終的な研究成果の取り纏めに進む予定である。 なおこの過程で時間的な猶予が許すようであれば、沖縄でのインタビュー対象者を通じたスノーボールサンプリングから浮かび上がってきた、フィリピン在住の元沖縄在住フィリピン人ミュージシャン当事者へのインタビューと、東京で活躍したフィリピン人ミュージシャンへのインタビューも実施したいと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、歴史的史料や統計資料を発掘するためにアメリカへ、またインタビューのためにフィリピンやタイへ海外調査へ行く予定であった。しかし実際には沖縄公文書館で多くの歴史的史料や統計資料にアクセス可能であった。またインタビュー対象者たるフィリピン人ミュージシャン(元フィリピン人男性エンターテイナー)や彼らを直接知る日本人ミュージシャンたちも、思いがけず複数人が沖縄でご健在であり、沖縄でインタビューが可能であったため、フィリピンへ渡航せずとも複数の対象者にインタビューを実施することができた。 ただし沖縄でのインタビュー調査が一通り終わったという目途が立ち次第、確かにフィリピンに存在が確認できている在フィリピンのミュージシャン(元フィリピン人男性エンターテイナー)たちへのインタビューを実施したい。さらに時間が許せば、沖縄公文書館で手に入れたものよりさらに精緻な統計資料や史料を発掘するために、アメリカ公文書館にも調査に行くことを予定しており、それらのために、繰越し予算を使用する予定である。
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