研究課題/領域番号 |
21K01937
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
安達 智史 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (90756826)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 女性ムスリム / スポーツ / 言説 |
研究実績の概要 |
本年度は、事例分析のためのフレームワーク構築のために、ミシェル・フーコーの言説論の検討をおこなった。 言説や権力をめぐるフーコーの理論は、近年、女性のスポーツ参加をめぐる研究において用いられるようになっている。「男性と女性のあいだの権力関係の制度化された不均衡ゆえに、情報は女性をめぐって生産される」ことから、一般に、女性の身体は、社会的な論争の対象となりやすい。たとえば、ファッション、売春、整形をめぐる議論を通じて、彼女たちは「語られる性」として構築されてきた。このことは、スポーツへの参加も同様である。スポーツ活動に従事する女性は、一方で、「ヘゲモニックな男性性」を構成する「従属する女性性」を拒否するものととらえられ、その身体は「失敗した異性愛」として否定的に語られてきた。だが他方で、ファッション、健康、新たな女性像といった視点から肯定的な評価が、近年、生み出され、流通するようになっている。 こうした考えは、本研究課題が対象とする現代ムスリム女性のスポーツ参加をめぐる理解にとって有益な視点を提供するものである。女性のスポーツ参加は、今日のイスラーム社会において重要な政治的議題となっている。一方で、20世紀後半の世界的なイスラーム化を背景に、「慎み深さ」という女性の身体をめぐる倫理規範が強調され、そのなかで、一部の政治的イスラーム主義により女性のスポーツ活動からの排除や抑制が主張されている。他方で、スポーツの商業主義化、新自由主義国家による予防医療や健康増進、女性の権利運動が、イスラーム世界における宗教市場の発展を通じた解釈実践の多様化と相まって、女性のスポーツ参加への要求が増している。こうした多様な言説のなかで、現代のムスリム女性の身体やそのスポーツとの関係が形成・構築されているのである。 以上の理論枠組みを踏まえ、来年度以降、実地調査をおこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Covid-19の影響で調査実施にこぎつけることはできなかったが、研究全体と関わる理論の検討をおこなうことができたため、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Covid-19をめぐり、海外での調査実施の見込みが立てば、マレーシアとイギリスで調査の調整および予備調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は大きく二点ある。第一に、Covid-19により海外における調査が実施できなかったこと。第二に、調査遂行のための備品が、大学の設備により部分的にまかなえたことである。 次年度は、Covid-19の状況次第で、海外(マレーシア、イギリス)における調査を実施する。また次年度は、所属大学を変更することから、従来の設備・備品を使えなくなるため、本科研のためにもともと予定していた機器備品等を購入する。
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