研究課題/領域番号 |
21K01940
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
井草 剛 松山大学, 経済学部, 教授 (80723692)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 年休取得行動 / 計量テキスト分析 |
研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 ・行動経済学 15 巻 (2022年2月) 査読論文「Changes in Annual Paid Vacation Behavior during the COVID-19」pp31-43. 単著 本研究実績は「調査の質」の担保や「データに基づいた正確な議論」が出来るよう、調査会社に依頼し、実施したアンケート調査結果をもとに、計量テキスト分析を用いてコロナ禍における年休取得行動の実態を明らかにしたものである。分析結果から、実際の自由記述や対応分析からは「病気や急な用事のため」に年休を取り残すというよりも、実際に病気のために年休を取得する傾向があるということがわかった。また、新型コロナウイルス感染症の拡大において、これまでと大きく異なる生活が起こる中で、年休取得行動も変化していることが分かった。特にテレワークは、時間的自由度の拡大、仕事、家事・育児との両立の道を拓くという指摘も多いなか、新しい働き方(テレワーク)は、時間的自由度の拡大に伴って、年休を不要のものとする可能性があることが分かった。 しかし、新型コロナウイルス感染症が年休取得行動を根本から変えたというわけではなかった。これまでの先行研究の結果と関連して実施された年休取得促進に向けての施策の影響がコロナ前と比べて年休取得日数が増えた労働者層を中心に残っていたのである。コロナ禍で多くの人々が年休の取得目的を見失う中、おそらくこの発見の意義は、年休に関する多くの先行研究が政策提案を行い、それらの研究成果が社会に還元されたことを表している可能性がある。これらの研究から年休未取得までの一連の流れについて、見解を示すことが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記した大規模アンケート調査の分析から、年休取得に影響を与える要因を明らかにし、その要因と年休取得日数との相関関係、因果関係の有無、さらにどのような因果関係が成立しているのかについて、計量テキスト分析及び共分散構造分析などを用いて推計することに成功している。医師社会の特異性からなる年休未取得の複雑な構造を明らかにすることに着実に進展が見られる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査分析から、日本の医師の年休未取得の要因を明らかにし、年休取得を促進させる方法を提案し、医師の労働環境改善につなげる。これに際しては、応募者が調査を継続している、労働時間の柔軟性の向上に成功し、高い年休取得率を誇る病院(タイ/サミティヴェート病院、インドネシア/HUSADA病院など)の先駆的医師交代制勤務の事例も参考にするため、現地での調査等を引き続く行っていく。
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