本研究では、大規模調査を行い、このデータを分析の材料とし以下のことを解明した。 2019年に労働基準法が改正され、年休5日の消化が義務付けられた。このことを表す特徴的な語も本研究の分析結果で散見されたなど、私たちの働き方は少しずつ変化していたことが窺われた。他方「休み方」を知らない、「休暇を積極的」に過ごしていない日本人という指摘が多くの先行研究で言われ続けてきたが、自由記述回答のテキスト分析では「旅行」が重要なトピックとなっていた。働き方と同様、「休暇に対する思い」も少しずつ変化していた。世界的にはコロナ禍では「新型コロナウイルスの影響でどこにも旅行できない」という理由が取得日数の低下に大きく影響を与えていたが、テキスト分析の結果を見ると、本調査では世界的な潮流と日本も同じだということが分かった。 他方、コロナ禍では新しい働き方(在宅勤務など)は年休を不要のものとする可能性があった。テレワークは、時間的自由度の拡大、仕事,家事・育児との両立の道を拓くと多くの先行研究は指摘してきたが、「年休という労働からの解放による自由」もこのテレワークという働き方に内包されてしまっていることが窺われた。年休は本来労働の義務のある日についてその労働義務を特別に免除する制度である。つまり、時間的自由度の増した労働日上に(または重なり合うように)年休は存在するべきではなく、年休は積極的な心身のリフレッシュなどに本来使われるべきものである。労働者が今一度、年休に関してその知識・意義を再確認する必要があった。
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