研究課題/領域番号 |
21K01958
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
武川 正吾 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40197281)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 福祉レジーム / 福祉意識 / パンデミック / 社会政策 |
研究実績の概要 |
これまでの福祉レジーム研究においては、社会政策・社会保障がどの程度脱商品化(労働力を商品化しなくても生活を維持できる制度設計になっているかどうか)や脱階層化(社会政策によってどの程度格差が縮小されているか)などに焦点が当てられてきた。本研究では2018年度に採択された研究に続き、福祉意識(社会政策に対する社会的態度)などの主観変数を扱う。パンデミックの前後で、福祉意識がどのように変化したかが主たる問いである。また可能な限り、国際比較の視点を導入する。 2021年度はパンデミックが収束しなかったため、パンデミック以前のデータを用いた分析を行った。その結果、以下の点がわかった。 福祉意識のうち「高福祉高負担」の支持率については、2010年代初頭までは増加の傾向が続いていたが,2015年に減少した。しかしコロナ禍の2021年の調査では再び増加した(60.9%)。2015年に減少した「普遍主義」の支持率についても、2021年には増加した(47.6%)。「必要原則」については2005年以降、2015年を含めて支持率が増加の傾向にあり,2021年において、さらに増加した(55.3%)。「公共部門中心」を支持する者の割合は2015年まで減少の傾向にあったが、2021年度には増加に転じた(72.8%)。また格差是正が政府の責任と考える者の割合は、2015年から2021年にかけては微減であるが(60.3から57.5%)、2000年代半ばの水準(52.9%)よりは高かった。 総じて言えることは、コロナ禍は福祉国家に親和的な価値意識を高めた可能性がある、ということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の日本では、東京の新規感染者数が秋に減少したものの、その後、感染が再拡大した。このためコロナ禍前後の福祉意識の変化を調査することはできなかった。しかし2000年から5年ごとに実施している反復横断調査の2021年データを入手することができたため、コロナ禍前とコロナ禍下におけるデータの比較はできた。しかし学会発表や論文投稿には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ポストコロナの福祉意識の調査に関しては、感染状況を見ながら実施の判断をする。またそれまでの間は、2000年、2005年、2010年、2015年、2021年の日本の調査データ、2019年の韓国の調査データ、2020年の台湾の調査データの詳細な分析を行う。その成果を論文投稿や学会発表につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画ではコロナ禍前後の福祉意識の変化を分析する予定であったが、2021年度中に日韓両国で感染が収束しなかったため、調査を延期せざるを得なかった。
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