研究課題/領域番号 |
21K01960
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
伊藤 美智予 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (10594046)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域回想法 / パーソン・センタード・ケア / 認知症 / 介護サービス / プログラム評価 / 地域記憶 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パーソン・センタード・ケア理論に基づく認知症ケアの推進のため、「地域記憶」づくりを用いた認知症ケアプログラムを開発することである。「地域記憶」とは、住民から収集した写真等をもとに編集された地域住民の生活の変容を映す映像である。これまでに「地域記憶」スライドショーDVDとそれを制作するための住民を対象とした地域介入プログラムを開発してきた。本研究では介護サービス事業所でのそれらの応用を試みる。将来的には、地域の中で生み出されたケアを地域の中で消費していく「地産地消型認知症ケアモデル」の構築を目指すものである。 2021年度は3年構想の初年度であり、準備作業を行う年度として位置づけた。本年度も、研究フィールドへの訪問を度々キャンセルせざるを得ない状況になるなど新型コロナの影響を受けたが、主に次の3点について研究を進めた。 第1に、研究体制の確立である。研究フィールドである熊本県A村の介護サービス事業所に研究参加の同意を得ることができた。種別が異なる複数の介護サービス事業所で、「地域記憶」の応用を試みる環境が整った。 第2に、「地域記憶」を用いた回想法的プログラムの効果検証の評価方法について検討した。研究対象とする利用者の選定基準、「地域記憶」の活用方法、評価データの収集方法、調査項目などについて決定した。とりわけ評価データの収集は、認知症ケアマッピング(DCM:Dementia Care Mapping)法を中心としつつ、利用者や介護サービス事業所スタッフらへのヒアリングなどを組み合わせながら多面的に実施する。 第3に、「地産地消型認知症ケアモデル」の全体像を仮説的に提示した。今回構想した3つの研究内容が地域の中でどのようにつながり展開されていくのか、他地域でも応用可能なモデルとなるよう検討を重ね、その概念図を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に予定していた準備作業を進めることができた。準備作業が比較的順調であったため、当初の予定を前倒しするかたちで、1年目に「地域記憶」を用いた回想法的プログラムの効果検証を行う予定で準備を進めていた。熊本県A村の訪問を2度企画したものの、新型コロナの影響を受けいずれもキャンセルとなった。 介護サービス利用者に研究参加していただくため、新型コロナの状況次第で今後も慎重な判断が求められる。他方で、研究フィールドの協力が得られており、今後の研究の推進方策が明確であることから、新型コロナの状況次第の面はあるものの、それ以外の大きな課題はないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は次の2点に取り組む。1)「地域記憶」を用いた回想法的プログラムの効果を検証する、2)介護事業所で「地域記憶」づくりプログラムを応用する。1)2)について、将来的に他地域・他事業所で実践できるよう、研究成果をふまえた手引書(映像資料含む)の作成も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に未使用額が生じたのは、新型コロナの影響で研究フィールドへの訪問が実現できなかったことが主な理由である。未使用額として計上した研究費については、2年目以降もこれらの使途で使用する予定である。 2022年度は本格的に調査研究を行うため、3-4回程度研究フィールドを訪問する予定である。そのため旅費を計上した。調査フィールドが遠方であり、研究の円滑な推進のため現地マネジメント業務をサポートしてもらうための委託費を計上した。研究成果をふまえた手引書の一部として映像資料の作成に係る業務委託費を計上した。研究協力者への謝金も計上した。
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