認知症者の人権保障と介護者負担の調和および虐待の防止に向けた学際的研究

2023 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K01967
• 研究機関: 岐阜聖徳学園大学
• 研究代表者: 中塚 晶博 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 教授 (20597801)
• 研究分担者: 山本 克司 安田女子大学, 現代ビジネス学部, 教授 (50389201) ; 森下 直貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (70200409) ; 目黒 謙一 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (90239559) [辞退] ; 吉田 輝美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90517153)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 認知症 / 介護負担 / 人権保障 / 意思決定

研究実績の概要

・オンラインでの会議、およびメール・電話等での打ち合わせに加え、以下の日程にて対面での会議を開催した：2023年3月11日（広島市内）、2023年12月10日（沼津市内）、2024年1月30日（大阪市内）
・認知症患者に対する医療・ケアの場面においては、以下の４者を独立の利益主体として考慮すべきである：（１）認知症者本人、（２）認知症者と特別な関係にある個人（家族など）、（３）認知症者本人に医療行為等を実施する者、（４）上記以外の第三者
・上記のうち（１）については、本人の意思の尊重と自由の拡大が課題となる。（２）につき、従来の議論は「介護負担の軽減」に重点が置かれてきたが、今後は、「介護拒否の権利」の保障に向けた議論の重要性が高くなると思われる。（３）につき、医療行為の正当性の基礎を患者本人の自己決定に求めた場合、認知機能障害を有する患者に対して医療行為を実施する医療者は法的に不安定な地位に置かれることとなる。アドバンス・ケア・プランニング（ACP）をはじめとする意思決定支援の手続き的正当化が解決の糸口となりうるが、その具体的要件の検討は今後の課題である。（４）の問題を処理する上で特に重要と思われる規定が監督義務者責任（民法714条）である。認知症者が第三者に損害を加えた場合の負担を公平に分担するためには、様々な方法が存在しうる。認知症者の行動に対する寛容性をいかに醸成するかが、今後の社会的ないし制度的な課題となりうる。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究開始当初の２年間はコロナ禍のため対面での会議等が出来なかったが、オンライン会議の利用等によって研究活動は概ね維持することが出来ていた。2024年度においては、ここまでの研究成果を踏まえ、認知症患者の権利保障と家族の負担軽減に向けた課題に取り組む。

今後の研究の推進方策

研究代表者・分担者の研究成果を学会・出版物等において発表するとともに、認知症患者の意思決定支援の技術および方法論に焦点を当てた研究に取り組む予定である。

次年度使用額が生じた理由

（１）研究開始当初の２年間はコロナ禍のため移動および対面での会議・面談等が困難であったこと、（２）2023年9月25日に研究分担者の目黒謙一先生が逝去されたこと、等により、次年度使用額が生じました。本年度においては、主に対面での会議の実施および研究成果の発表のための使用を見込んでいます。

研究成果

• [雑誌論文] Association of decreased frequency of conversation with depression, oral function and eating alone: A cross-sectional study of older adults during the COVID-19 pandemic (2024)
  • 著者名/発表者名: Yasuko Ishimoto, Yumi Kimura, Taizo Wada, Kiichi Hirayama, Emiko Kato, Mai Tatsuno, Michiko Fujisawa, Yoriko Kasahara, Masahiro Nakatsuka, Mitsuhiro Nose, Masanori Iwasaki, Satoko Kakuta, Mayumi Hirosaki, Kiyohito Okumiya, Kozo Matsubayashi, Ryota Sakamoto
  • 雑誌名: Geriatr Gerontol Int 巻: 24 ページ: 385-391
  • DOI: 10.1111/ggi.14832
  • 査読あり
• [雑誌論文] 認知症患者の自己決定権と意思決定支援 (2024)
  • 著者名/発表者名: 中塚晶博
  • 雑誌名: 精神科治療学 巻: 39 ページ: In press
  • 査読あり
• [雑誌論文] 認知症高齢者の法的課題の顕在化 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 雑誌名: 高齢者虐待防止研究 巻: 19 ページ: 6-7
  • 査読あり
• [雑誌論文] 高齢者虐待の原因となる高齢者の身体機能の低下に関わる重要判例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 雑誌名: 日本高齢者虐待防止学会 創立20周年記念誌 巻: 1 ページ: 50-52
• [雑誌論文] A氏にある自然と形成された介護したい気持ち-子が感じている認知症の親を介護 (2023)
  • 著者名/発表者名: 吉田輝美
  • 雑誌名: 日本ヒューマンリレーション研究学会誌 巻: 4 ページ: 184-198
  • 査読あり
• [学会発表] 認知症高齢者の人権保障と権利擁護の課題 (2024)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 学会等名: 日本人権教育研究学会第21回大会
• [学会発表] 家族関係の中にある加害と被害 (2023)
  • 著者名/発表者名: 室城順子、山本克司、松本武洋、中塚晶博、岩佐憲一
  • 学会等名: 日本ヒューマンリレーション研究学会第4回全国大会
• [学会発表] 高齢者法学のヒューマンリレーション―認知症高齢者の権利擁護を保障する法体系の構築の一考察― (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 学会等名: 日本ヒューマンリレーション研究学会第4回全国大会
• [学会発表] 法学と社会福祉学の学際領域の著書 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 学会等名: 日本福祉図書文献学会第25回全国大会
• [図書] 福祉に携わる人のための人権読本 第２版 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本克司
  • 総ページ数: 172
  • 出版者: 法律文化社
  • ISBN: 978-4589042811