研究課題/領域番号 |
21K01972
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
高阪 悌雄 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (40537338)
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研究分担者 |
立岩 真也 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (30222110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 所得保障 / 介護保障 / 支援費制度 / 日常生活支援 / 障害者総合支援法 / 重度訪問介護 |
研究実績の概要 |
日本社会福祉学会機関誌『社会福祉学』62(1)(2021年5月発行)において、放送大学教授の大曽根寛教授からの拙著『障害基礎年金と当事者運動』への書評リプライを行った。その中で、所得保障運動を展開した脳性マヒ者グループが展開した運動の中心的な位置をつ明示した。こうしたことを述べつつ、このグループとは対立した、介護保障を求める重度障害者グループが捨象され、運動が進行した点を明示し、その後の介護保障運動の展開の可能性を示唆した。
社会政策学会(2021年10月17日・オンライン開催)において、百瀬優氏からの書評に対してのリプライを行った。その中で、共通の要求項目を持った脳性マヒ者の運動展開におけるグループ化の重要性について述べ、これが障害基礎年金の複数のアクター間の利害調整に大きな影響を及ぼした点について述べた。こうした所得保障運動展開におけるグループ化の重要性を述べることで、この運動で捨象された介護を求めた重度障害者グループのその後の運動の展開を示唆した。
2021年3月16日にSOMPO福祉財団賞を受賞した拙著「障害基礎年金と当事者運動」の授賞式があった。その際、今後の研究の方向性について質問を受けた。その解答として所得保障運動の福祉国家による対応の限界性について述べ、その限界性を打破した運動として位置づけられる可能性がある介護保障運動の展開を研究してきたい旨を述べた。具体的には、1990年の福祉関係の八法改正以降に、地方レベルでの運動の展開により登録ヘルパー制度を導入する自治体が増加、結果的にそうした地方の動きに国が介入せざるを得ず、支援費制度の日常生活支援の導入に至ったこと、さらには障害者総合支援法による重度訪問介護の設置に至るまでのプロセスに介護保障運動が大きく介入していることを述べ、こうした動きを追い普遍化することで福祉国家を超える新たなモデルとなる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究テーマとなる介護保障運動は、運動家が東京や大阪等、主要都市に在住しており、資料収集も東京や大阪等で行う必要があり、前任校の名寄から現地に行くのは多大な時間を要し、困難であった。今回青森の大学に移動し、インタビューや資料収集が行いやすくなった。今後研究を加速させていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
青森の大学に移ったので、インタビュー対象者が居住する都会へのアクセスが便利になった。よって、今後の研究環境が整ったので、介護保障運動を展開した運動当事者やそれを受け止めた政治家、官僚にインタビューを行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
名寄からの移動が時間的に難しく、資料収集やインタビューが実施できていなかった。大学の異動に伴い重点的に行っていきたい。
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