研究課題/領域番号 |
21K01993
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高岸 幸弘 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (00635170)
|
研究分担者 |
堀江 まゆみ 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (50259058)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | バウンダリー・プロジェクト / 子どもの性的問題行動 / アセスメント |
研究実績の概要 |
2023年度は米国で開発されたバウンダリー・プロジェクトの原版の修正が完了したことを受け、それらの訳出作業を行うことを中心に行った。その中で子どもの性的問題行動の発現には、性的刺激、特にポルノグラフィの暴露が大きく影響していること、それらの監督が保護者に求められることが強調していることが確認された。そこで、ポルノグラフィの暴露あるいは使用と、子どもの性的問題行動の発生に関する論文レビューを行い、それらの成果を熊本大学教育学部紀要に発表した。 また、2021年度に実施したアンケート調査の結果を改めて解析しなおし、小さな子どもが呈する性的行動および性的問題行動の発現頻度について、まとめた。結果を第29回日本子供虐待防止学会で発表し、学会参加者と議論を行った。議論の内容はバウンダリー・プロジェクトのセラピーセッションで使用することのできるエピソードのデータベースの一部となった。 データの見直しは子どもの性的問題行動のアセスメントに関する調査のそれも実施した。この調査は、当初デルファイ法を用いて、子どもの性的問題行動の専門家や実践者のコンセンサスを作ることを目指したが、結果は収斂されるものではなく、逆に拡散されるものになったことから、アセスメント項目は絞って個々の子どもの課題背景を取りこぼしてしまうことを避けるべきであるという考察が得られた。この再解析の結果は第87回日本心理学会で発表し、学会参加者と議論を行った。議論の内容はバウンダリー・プロジェクトのセラピーセッション開始前のアセスメントフェイズにおいて使用するべき項目のデータベースの一部となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的であるバウンダリー・プロジェクトの日本での導入のための、実施マニュアルの原版の修正作業が遅れてしまったこと、およびその間に対象児童の性的問題行動のケアを他の機関にリファーせざるを得なくなったことから、バウンダリー・プロジェクトの実施対象者のリクルートから実施する必要が生じたため。 現在改めて対象者の募集を進めており、希望(保護)者も現れているため、今後具体的なバウンダリー・プロジェクトの実施を計画していくこととしている。
|
今後の研究の推進方策 |
修正版バウンダリー・プロジェクトの実施に向けて、対象児童のアセスメントを行い、グループ編成を行う。グループはメンバーの等質性をある程度は担保する必要があるため、バウンダリー・プロジェクト実施に適切なメンバー構成となるまでは実施を保留する。その間は個別の治療セッションを実施し、個別対応が可能となるバウンダリー・プロジェクトの修正も同時に進める。 バウンダリー・プロジェクト実施の効果検証を行い、結果は学会発表および、論文の形式で発表していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画が、本研究で開発するプログラムの修正の遅れとそれにかかる訳出作業のスケジュールが後ろ倒しになったため、研究期間の延長をすることとなった。それにより、当該年度に使用しなかった分の予算を次年度に申請したため。 使用計画については、プログラム(バウンダリー・プロジェクト)実施に際する開発者(Dr.Gil)のスーパービジョンを受けるための旅費と、プログラム実施にかかる経費として使用する予定である。
|