研究課題/領域番号 |
21K02009
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
久保 樹里 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (10803679)
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研究分担者 |
和田 一郎 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (10711939)
林 浩康 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70254571)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 当事者主体 / チームアプローチ / ピアサポーター / 地域基盤 |
研究実績の概要 |
2023年度も困難を抱える子ども・若者とその家族を地域で支援するチームアプローチであるラップアラウンドの支援現場での実装の素地づくりをめざして調査研究を進めた。ラップアラウンドの理念を支援現場に周知する取り組みを継続するなかで、モデル実装を行う自治体や施設が増えだし、重要な要素である当事者主体の支援、地域の公式、非公式な支援者の支援ネットワークの構築などが少しづつ進められてきた。モデル実装自治体職員と共に9月には日本家族療法学会、11月には日本子ども虐待防止学会のシンポジウムで実践の発表を行った。前者では当事者を中心におくチームづくりをテーマに、後者は当事者主体で支援プランを作成するための工夫をテーマに発表を行った。遠方出張が可能となり、ピアサポーターの役割がどのようなものかを調べるため8月に米国でフィールドワークを行った。ラップアラウンドの実装団体(ワシントン州・オレゴン州)4か所に訪問し、マネージャー、ケアコーディネーター、ピアサポーターから実践について話を聞くことができた。その結果、米国ではピアサポーターはなくてはならない存在になっており、当事者の声を引き出すために重要な役割を果たしていることがわかった。ピアサポーターについての論文の翻訳を進めてきているが、その内容とも重なる結果であった。米国の調査内容について2024年3月24日にオンラインで調査報告会を実施し24名が参加した。2024年2月にはニュージーランドの教育分野でのラップアラウンドの実践について調査し、マオリ族のピアサポーターの存在の意味と支援の難しさについても話を聞いた。オーストラリアの社会的養護出身の若者支援機関においてピアサポーターの活動について、支援者が当事者理解を進める研修機関の実践についても調査することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は遠方への出張が可能となり、これまで止まっていた米国のワシントン州とオレゴン州において、4か所のラップアラウンド提供団体を訪問し、ラップアラウンドの関係者やその協力機関の職員も含めて話を聞くことができ、継続的に調査ができる素地を作れた。また米国以外にもラップアラウンドを展開しているニュージーランド、ピアサポーターが活躍するオーストラリアの実践の概略も聞くことができ、こちらも継続的な調査の同意を得ることができた。2023年度は来年度の調査の素地を作るにとどまり、詳細なインタビュー調査にはいたれておらず、やや遅れていると考える。またラップアラウンドの研修実施後のアンケートについてはテスト的に実施するにとどまった。アンケート項目を精査する必要がある。モデル実装中の自治体では、まだピアサポーターが活動できているところはなく、こちらも調査ができるところまでは進んでいない。そのため調査方法の再検討が必要なため、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
①米国ワシントン州・オレゴン州のラップアラウンド提供団体のケアコーディネーター、ピアサポーターに対し、個別のインタビュー調査を実施し、ピアサポーターの活動の意味、専門職との協働の推進の方法などについて調査を実施し、その成果を発表する。②2023年度翻訳した米国のピアサポーターについての各種論文の整理を行い、紹介する。③日本のモデル自治体の職員に対し、ラップアラウンド実装におけるピアサポーターとの協働についての意識と工夫についてインタビュー調査を実施し、その成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスまん延の影響を受け、フィールドワークができない期間があったため、調査が滞った。2023年度よりフィールドワークを再開し、調査の確約が取れたため、2024年度に調査対象者に対する詳細なインタビュー調査を日米で実施し、その結果を分析し、研究成果を発表する予定である。加えて、翻訳した米国のピアサポーターに関する論文を整理し、論文化する予定である。
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