研究課題/領域番号 |
21K02023
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
山本 惠子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20309503)
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研究分担者 |
田原 慎介 公立諏訪東京理科大学, 共通・マネジメント教育センター, 講師 (80779976)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 介護保険制度 / 要介護・要支援の認定率 / 介護費用 / ひとり暮らし高齢者 / 介護予防 |
研究実績の概要 |
1年目である2021年度では、新型コロナウイルス蔓延のため実地調査を計画通りに実施できなかった。当初案では、保険料所得段階別人数表に基づいて、所得と介護ニーズの相関関係を明らかにし、ロジスティック回帰分析を行うことを基礎リサーチとした。この解析を踏まえて、要支援・要介護の予防プログラムの開発に向けて、ソーシャルワーカーや民生委員にヒアリングを行うこととし、グループ・インタビュー調査を目標とした。しかしながら対面の調査は困難となり、文献研究を中心に研究調査を進めざるを得なかった。文献研究では、第1に、高齢者の孤立とそれに伴う生活後退とADL低下に関する資料を精査した。特に孤立対策として有効な社会的処方の文献を検討した。第2に、ヒアリング調査では、神奈川県大和市健康福祉部高齢福祉課高齢福祉係の担当者から「管理栄養士の訪問栄養相談事業」について聴取した。同市の事業の骨子は、基本チェックリストにより低栄養リスク者を特定し、低栄養の改善と介護予防を実践することで、介護予防、介護費と医療費の節減を図るというものであった。さらには、低栄養に陥る危険性のある者に早期の生活介入を試み、介護予防・QOL向上を目指すというアプローチを理解した。加えて、対象者のBMIを基軸とした、モニタリング期間、対象者数、介入成立率、事業予算を確認した。第3に、介護事業者を招聘し、コロナ禍にある事業経営の実態を把握した。第4に、著書『地域共生社会と社会福祉』所収の「介護保険制度20年目の検証 ―準市場の視点から再考する」を上梓した。他にも「英国の福祉の市場化 ―ここまで市場化は進んだ」『賃金と社会保障』および「協同セクターの概念整理と課題の抽出」『ローカル・ガバナンス研究』をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延の影響で、実地調査を実施できなかった。そのため、保険料所得段階別人数表に基づいた、所得階層と介護ニーズの社会的な相関関係を明らかにできていない。またプログラム開発に向けてのソーシャルワーカーや民生委員に関するグループ・インタビュー調査も実施困難となった。代わって、大和市高齢福祉課職員のヒアリング調査を行い、そこから低栄養とフレイルの相関関係、栄養管理による介入により、要支援・要介護の発生を抑制できる事例を学んだ。今後は、大和市の協力を得ることで、調査計画の実現性が高まっている。延期となった調査計画は次年度にあわせて行う。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2022年度には、延期されたロジスティック回帰分析と保健福祉関係者のグループ・インタビュー調査を行い、保険料第1~3段階の高齢者に着目しながら、歩行速度の低下・疲れやすさ・活動性の低下・筋力の低下・体重減少に留意したうえで、フレイル層を対象にしたパイロット事業に着手する。事業の流れは、給配食→栄養指導・生活相談→通いの場でのバイタルチェックと体操→社会関係の構築→個別のアドボカシーの実践を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目である2021年度では、新型コロナウイルス蔓延のため、対面形式による実地調査を計画通りに実施できなかった。その結果、予算使用額は満額執行できていない。2年目は、前年の未消化額と2年目の新たな予算を合算させて、調査研究を軌道に乗せたいと考えている。ただし、この予算計画はコロナウイルスの感染状況に依存する。
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