研究課題/領域番号 |
21K02025
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
平山 亮 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10728075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 性的マイノリティ / 高齢者ケア / ケアマネジャー |
研究実績の概要 |
本年度は、次年度以降に行う質問紙調査の準備期間として、調査項目の検討を目的とした文献調査を主に行った。本研究における主な調査対象者はケアマネジャーであるため、対人援助の専門職を対象とすることを念頭に、そうした人々の性的マイノリティに対する態度を質問紙によってどのように把握すればよいのか、その参考となりうる先行研究を幅広く検索し、その情報を収集した。その上で、それらの研究から得られている調査方法に関する知見を整理しデータベースにすることを、本年度の主たる目的とした。 対人援助の専門職を対象にしたそのような調査研究は、国内はもちろん国外においても限られており、検討できた先行研究の数は少ない。しかしながら、被援助者の性的指向や性同一性をどのように受け止めているかを質問紙で把握するには、何についてどのような留意が必要かを考える上で、重要なデータを収集できたと考える。なお、このような先行研究の検討は、次年度以降も継続する。 本年度はまた、先行研究の検討の一環として、国外文献の翻訳プロジェクトも実施した。具体的には、セクシュアリティやジェンダーによる差別が維持されるメカニズムの1つとして、男性性の実践に着目した英語論文の翻訳を行い、その内容について検討するとともに、翻訳を幅広く共有できるようにするための刊行準備に取り組んだ。同論文は、援助職と被援助者の関わり合いのような人々の相互行為のなかで、セクシュアリティやジェンダーによる差別が等閑視され再生産されるプロセスを分節化したもので、対人援助の現場における性的マイノリティ高齢者への対応の現状とその改善を考える上で有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対人援助の専門職を対象とすることを念頭に、性的マイノリティへの態度を調査するための方法の検討に必要な情報は一定程度整理・蓄積できており、本年度の目標はおおむね達成できたと考える。他方で、文献調査の過程において、調べるべき先行研究の幅を広げる必要性も示唆された。本研究課題の主な対象者は高齢者ケアに関わる専門職だが、それに限らないさまざまな専門職を対象とした研究を幅広く調べることで、調査方法をより精緻に検討できる可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った調査方法の検討結果にもとづいて、質問紙調査の実査準備を始める。なお、当初の計画では、ケアマネジャーのみを対象に調査を行う予定であったが、そのような調査だけでは、性的マイノリティへの態度に関する結果がケアマネジャーに特有のものなのか、それともより幅広く見られる態度なのかの識別が不可能になることが、本年度の検討結果から示唆されたため、ケアマネジャーに限らない一般市民に対する調査の必要および実施可能性についても考える方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初、質問紙調査の実査準備に取り掛かる予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、調査方法の検討に注力することになった。次年度使用額が生じたのは、実査準備の活動が開始されなかったことによる。次年度には、本年度延期した実査準備の活動を実施する予定であるため、本年度の助成額もあわせて使用する。
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