研究課題/領域番号 |
21K02036
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
後藤 至功 佛教大学, 専門職キャリアサポートセンター, 講師 (70553080)
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研究分担者 |
家高 将明 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 准教授 (10636236)
北垣 智基 天理大学, 人間学部, 准教授 (60769842)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | BCP / BCM / 災害福祉 / 災害ソーシャルワーク / 社会福祉施設・事業所 / 社会福祉法人 / 福祉避難所 / 地震 |
研究実績の概要 |
2021年度、自然災害及び感染症のBCP(事業継続計画)策定が義務化された。本研究は「社会福祉施設・事業所におけるBCP・BCM」策定の基礎となる理論的視座を示すことを目的として、2022年度は昨年度に引き続き、以下の3つの研究を進めた。 ①被災社会福祉施設・事業所の実態調査・・・新型コロナ禍のもとではあったが、過去の被災事例(東日本大震災、西日本豪雨災害等3事例)及び先駆的事例(サンシャイン会、愛和会、誠光会等10事例)の関係者に対するインタビュー調査(半構造化調査・セミ・ストラクチャード形式)を行い、BCP策定にあたっての具体的な構成要素、策定プロセス、関係機関・団体、地域との連携に関すること、役職員の関わり、訓練(シミュレーション)や研修等の取り組み等を明らかにした。 ②BCP策定に取り組む社会福祉施設・事業所の実態調査・・・群馬県、大阪府、岡山県、徳島県、長野県において社会福祉経営者協議会を通じて実態調査を実施し、(対象数計1037法人、有効回答数計227法人(回収率23.7%))分析することができた。2021(令和3)年10月1日時点において、BCPを策定済もしくは策定中と回答した割合は、64.1%(高齢者福祉分野:66.6%、障害福祉分野:60.0%)であった。 ③災害福祉、BCP・BCM関連文献・資料の収集・・・BCP及びBCM(事業継続マネジメント)に関連する先行研究の文献・資料を収集、2021年度についてはその中から2016年熊本地震に関連する文献・資料を29本抽出、キーセンテンスをカード化した上でカテゴリーの生成を行い、結果図およびストーリーラインを作成し、地震災害(津波無し)におけるBCP要素の概念化を試み、学会にて発表を行った。分析の結果、最も大きなカテゴリーとして「使命に基づく役割・支援」「組織運営・経営管理」「基盤(ライフライン)」の3つが生成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①被災社会福祉施設・事業所の実態調査・・・新型コロナ禍の影響はあったが、被災地事例3事例、先駆的事例10事例の収集を行うことができた。本調査については、未だ感染拡大の波が収まることはないが、2023年度にかけても引き続き実施を試みる予定である。なお、インタビュー調査の内容については、「社会福祉施設・事業所のBCP」として書籍や各種論文、一定の成果としてまとめることができた。 ②BCP策定に取り組む社会福祉施設・事業所の実態調査・・・本調査については2021年度中に回収を行い(有効回答数計227法人(回収率23.7%))、論文としてとりまとめを行うことができた。2021(令和3)年10月1日時点において、BCPを策定済もしくは策定中と回答した割合は、64.1%(高齢者福祉分野:66.6%、障害福祉分野:60.0%)であったこと、一方で全23事業のうち、障害福祉分野の共同生活援助(策定率:42.1%)及び計画相談支援・地域相談支援(策定率:53.2%)の策定率が低い傾向にあり、事業種別によって進捗状況に差が認められた。加えて、入所施設サービスとその他の在宅サービスのBCP策定率を比較すると、入所施設サービスにおけるBCPの策定が進んでいる傾向にあることが認められた。 ③災害福祉、BCP・BCM関連文献・資料の収集・・・熊本地震(地震・津波無し)に関連するもの29本の文献・資料を抽出、本文献・資料をグラウンデッド・セロリー・アプローチの要素を使い、カテゴリー化し、最終的にBCP要素の結果図およびストーリーラインを作成し、分析を行った。その結果を日本社会福祉学会にて口頭発表を行うことができた。併せて、論文にて一定の成果を発表することができた。分析の結果、最も大きなカテゴリーとして「使命に基づく役割・支援」「組織運営・経営管理」「基盤(ライフライン)」の3つが生成された。
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今後の研究の推進方策 |
①被災社会福祉施設・事業所の実態調査・・・被災地における実態調査については、BCPの構成要素が明らかになるにつれて、追跡調査、新たな視点での実態調査を行う必要を感じている。また、この間も新たな大規模災害が発生してきており、その内容の状況調査を行い、事例の蓄積を試みたい。これは従来から、被災地調査における絶対的な量的不足という状況から鑑みても重要な点であると考える。また、種別では、今年に入り、高齢、障害分野に加え、児童福祉施設・事業所においてもBCP策定の努力義務化となった。児童分野については未着手であり、今後、研究要素の柱として加えていきたい。 ②BCP策定に取り組む社会福祉施設・事業所の実態調査・・・現在4府県においての素集計及び傾向分析を行うことができた。調査結果より、先駆的実践事例についてヒアリング調査を行い、更なる追跡調査を試みたい。また、2024年度、BCPの完全義務化が予定されており、2024年度においての策定実施状況の4府県における追跡(定点)調査の必要性を感じている。また、全都道府県における策定の状況について調査を敢行できないか模索している状況である。 ③災害福祉、BCP・BCM関連文献・資料の収集・・・2023年度については引き続き、文献資料を収集する。今後、東日本大震災(地震・津波有り)および西日本豪雨災害(風水害)に関連する文献資料を抽出し、2022年度と同様の分析を行い、BCP要素の結果図およびストーリーラインを作成する予定である。今後、①~③の研究を通して、社会福祉施設・事業所におけるBCP・BCMに関する要素抽出及び分析作業を整理・検討し、BCP・BCMの理論化、体系化の仮説立てを試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度については新型コロナ禍の影響により、被災地社会福祉施設。事業所のインタビュー調査を予定通りに実施することが難しかった。2023年に入り、未だコロナ禍の影響は続くが引き続き、インタビュー調査を行うべく旅費等を計上している。
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