研究課題/領域番号 |
21K02041
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研究機関 | 宮崎国際大学 |
研究代表者 |
河原 国男 宮崎国際大学, 教育学部, 教授 (00204751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北海道家庭学校 / 寮長藤田俊二 / 実践記録 / 対話的コミュニケーション / 理解 / 成長証明 / エビデンス |
研究実績の概要 |
1. 藤田俊二日誌についてデータ入力作業を順調に進めた。初期日誌について。整理番号6(入寮1966.8.28-卒業1968.8.1)大学ノート4冊、整理番号8(1966.9.30-1962.8.20):大学ノート9冊、整理番号9(1967.2.16-1969.12.25):大学ノート7冊,整理番号13(1968.8.7-1971.9.20):大学ノート8冊,中期日誌について。整理番号45(1974.3.7-1976.2.16)大学ノート7冊。以上について、現時点(2022.5.6)でデータ入力が終了している。2.北海道家庭学校機関誌「ひとむれ 再刊1000号記念特集号」2022年1月25日に、学校側の依頼により「『ひとむれ』の対話的世界について」を寄稿させていただいた。3.「北海道家庭学校寮長藤田俊二の中期日誌における寮生理解の諸様相について ―対話的コミュニケーションとその特質、並びに同校にとっての意義―」の原稿を作成している。寮生ー寮長の教育的関係が自発性の絆にちかい相互行為となってゆく経過を明らかにしている。上篇・下篇に分けて、2022年8月末に大学に提出し、12月末に学部紀要として公表する予定。4.2021年9月22日に家庭学校訪問し、特別顧問、理事、校長と面談し、研究計画について資料を提示し説明し、協力について書面確認を得た。9月24日には北斗市の藤田俊二旧宅を訪問し、藤田の未公刊の直筆原稿(「続もうひつの少年期」、「卒業生を訪ねて」400字原稿用紙70枚、「いじめの根底にあるもの」400字原稿用紙40枚、弔辞)など資料収集することができた。5.その他。北海道家庭学校創設に際して、留岡幸助が欧米関係施設を訪問した中で、ハンブルクの感化施設を創設したHinrich Wichernとの関連があるが、この両者の関連性について、研究課題として認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、5つの課題を明記した。このそれぞれについて、ほぼ当初計画通りに進展できた。 課題1として位置付けた藤田俊二日誌のデータ入力については、入力協力者2名によって、合計して毎月30数時間程度作業していただいている。若干予定よりも、少ないが、作業そのものは順調に捗っている。課題2として位置づけた「特徴的な指導方法と評価の実践とその思想」については、現在「中期日誌における寮生理解の諸様相」に着目して「対話的コミュニケーション」の実践として特質を把握し、公表準備している。この課題に関してもっとも基礎となる論文となるだろう。 課題3として位置づけた「寮母藤田夫人の養育に関する役割」についても、課題2の論文によって基礎部分が解明されことになり、取り上げる日誌の確定とともに、今後の方向が明確に展望できるようになった。課題4に位置付けた卒業生の聴取については、中期日整理番号81のS氏と連絡が取れ、面会することが可能になった。現時点では面会は未実施であるが、S氏の方から関心を持ってアクセスしてくださっている。課題5の「学校」概念の理論的定式化については、課題2の論文内容でM.ヴェーバーの「アンシュタルト」概念と「結社」概念を対比的に用いることによって、実質的な内容は用意することができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画を推進する。 課題1について。データ入力は引き続き、月に30時間以上着実に遂行する。課題2について。谷昌恒校長の講話、特に「難有」の理念、パウロの書簡などをどのように寮生が作文においてうけ止め、藤田は日誌に記述しているか、という問題を今年度中に追究する。課題3。寮母藤田セツ子婦人が果たしていた役割については、可能なかぎり今年度中に着手し、次年度に公表できるようにする。課題4について、卒業生S氏と連絡をとって、面談する機会を確保する。この課題2、3は、藤田の対話的コミュニケーションの実践を成立させる基盤的契機として位置付ける。以上の研究状況と成果について、北海道家庭学校及び、藤田俊二遺族に研究成果、取り組み状況について報告するとともに、北斗市の旧宅、あるいは家庭学校で必要な資料を収集する。 なお、これまでの研究成果を踏まえて、大学の公開講座で地域社会に還元するために、今年度末に「対話的コミュニケーションに向けてー北海道家庭学校寮長藤田俊二の日誌世界ー」と題して講演する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費の調整で、450円という端数が生じた。今年度は最終段階では分単位で作業をお願いする部分を残し、できるだけ0になるように調整したい。
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