小児がん体験は、子どもにとってその後の人生を左右する重大な出来事である。小児がん治療の最終目標は、病気を治し可能な限り発病前の生活に患児を戻すことだが、医学的に病気が治癒しても社会復帰がスムーズに出来ないケースが散見される。小児がん経験者におけるレジリエンスは、患児自身が病気となった自分自身を受けとめ、闘病体験を自分自身の人生の一部に組み込むプロセスである。このプロセスには、病気に対する正しい知識の習得・周囲との信頼関係の構築が欠かせない。近年、小児がん患児本人への病気の説明と同意・納得(インフォームド・アセント、以降IA)を行うことの重要性が世界的に認識されている。十分なIAは患児のレジリエンス獲得の原点であるが、日本においてはIA実施が十分とは言えない。本研究では、多種職で構成される医療サポートチームのもと小学生以上にIAを行い、小児がん患者におけるレジリエンス獲得の構造を解明し、本当に必要な心理社会的支援とは何かを明らかにすることである。 令和3年度の研究目標は、過去の小児がん経験者を対象にレジリエンス獲得のプロセスを明らかにすることであり、2010年以降に小児がんと診断された者で、診断時の年齢が中学生以上、診断時にIAを実施され本人も病状を理解できている者、治療終了後5年以上が経過している者を対象に、診断名は知りたかったか、入院してから診断名を伝えられるまでの気持ち、病気により変化したこと、病気の受け止め方の経時的変化、現在の気持ち、将来への不安、夢などをインタビューすることである。しかし、該当患児が他県に在住している場合が多く、COVID-19の流行により他県患児との交流が困難であったため令和3年度は十分な活動ができなかった。今後は、ZoomによるWeb面談も考えたい。
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