小児がん体験は、子どもにとってその後の人生を左右する重大な出来事である。小児がん治療の最終目標は、病気を治し可能な限り発病前の生活に患児を戻すことだが、医学的に病気が治癒しても社会復帰がスムーズに出来ないケースが散見される。小児がん経験者におけるレジリエンスは、患児自身が病気となった自分自身を受けとめ、闘病体験を自分自身の人生の一部に組み込むプロセスである。このプロセスには、病気に対する正しい知識の習得・周囲との信頼関係の構築が欠かせない。 近年、小児がん患児本人への病気の説明と同意・納得(インフォームド・アセント、以降IA)を行うことの重要性が世界的に認識されている。十分なIAは患児のレジリエンス獲得の原点であるが、日本においてはIA実施が十分とは言えない。 申請者は、前方視的な手法を用いることにより、新規小児がん患者でのIA実施症例数を増加させる事を目指した。入院時からの患児と親に対する多種職・多方面からのアプローチが、入院生活や親子関係、その後の治療においてどのように影響を与えるのか、また、親に対して積極的な介入を行い親自身の心理的・社会的安定を図ることが、入院生活中の親子関係にどのような影響を及ぼすのかを考察し、真に必要なサポート体制とは何かを解明する事を目指した。そして、サポート体制を充実させることが、IA実施率の向上につながると考える。また、真に必要なサポート体制の構築には、家庭や医療機関という枠組みを超えて、様々な行政機関や教育機関との連携の必要性や財政問題が絡んだ社会問題であると考えた。 令和4年度以降の研究では、対面調査結果からレジリエンスに関連するキーワードを抽出し、KJ法を用いてカテゴリー分類を行なった。また、調査結果やがん経験者への直接のインタビューによる言葉から、患者が望む本当に必要な「支援」とは何かを明らかにした。
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