研究課題/領域番号 |
21K02055
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
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研究分担者 |
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 教授 (00380650)
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
佐藤 学 沖縄国際大学, 法学部, 教授 (80352475)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公共調達 / 協働 / 社会的連帯経済 / 委託 / 社会的価値 / 相互扶助 / 地方自治 / ワーカーズ・コレクティブ |
研究実績の概要 |
第一に、日欧のこれまでのガバナンス研究をレビューし、公共調達における契約のあり方がガバナンスに大きな意味を持つことを確認するとともに、民主主義の捉え方にも新たな問題提起がなされていることを理解した。 第二に、前年度に引き続き、日本の自治体の公共調達・契約の実態を把握するため、首都園、中部圏および四国所在の都市自治体への委託実績データの収集および整理を行った。日本の自治体は社会サービスを中心に非営利組織への業務委託を増やす傾向にあるが、NPO法人やコミュニティ組織など市民の発意によって設立された団体への委託は低位にとどまり、契約額も低いことが改めて確認された。 第三に、日英の社会的企業を比較するために、神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会の協力により神奈川県内のワーカーズ・コレクティブの決算データを入手し、概要を把握した。ここから、ワーカーズ・コレクティブという同じ事業体でも事業領域によって収支構造が異なること、会議等によるワーカーの合意形成は経営の持続性にとって重要な要素であること、しかし他方で公的介護保険、認可保育などのいわゆる制度事業や行政による委託事業などへのアクセスの程度が、経営の安定に大きな影響を及ぼしていることが確認できた。 第四に、非営利のネットワークのベースとなる連帯的な地域づくりについて、農山村(高知県四万十町・土佐町・黒潮町)の連帯的な取引関係と、小地域の居場所活動を通じた相互扶助活動(高知県琴平町・三豊市)を視察した。前者は、農家女性の生活改善運動として始まった加工品づくり活動を通じた居場所が、経済活動を通じて生産者と消費者をつなぐ居場所になっていること、後者は、子どもを対象にした居場所活動が多世代交流の拠点になっているというように、ある種の居場所が相互扶助の関係をつくり、それが経済活動の基盤になっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた英国調査は新型コロナウィルス感染の影響で実施できなかったが、その分国内調査に充てることができた。今年度は英国調査を実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、新型コロナウィルス感染の影響が懸念されるものの、英国自治体や非営利組織を訪問し、公共調達の実態を調査したい。特に、公共調達に社会的価値を戦略的に反映している自治体が具体的にどのように戦略を立案したのか、また、それは非営利セクターや地域経済にどのような影響が及んでいるかを把握したい。 それに関連して、EU・英国の公共調達関連の法令・政策文書をレビューするとともに、非営利セクター側が公共調達について行った調査レポート等も収集する。 国内自治体の非営利組織に対する委託事業の傾向や農山村地域の経済循環の取り組みについて把握するため、関係者へのインタビューも行う予定である。 他方で、前年度に引き続き、ガバナンス論や第一線職員論に関連する研究論文のレビューを行い、上記の公共調達や契約の実態が既存の理論・学説に照らしてどのような説明が可能か考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来渡英する計画であったが、新型コロナウィルス感染の影響でできなかった。令和5年度には渡英する予定であり、最近の物価高騰も考慮し、次年度使用額に回させていただくことにした。
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