研究課題/領域番号 |
21K02067
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
小路 純央 久留米大学, 付置研究所, 教授 (50343695)
|
研究分担者 |
柳本 寛子 久留米大学, 医学部, 講師 (00441676)
森田 喜一郎 久留米大学, 付置研究所, 客員教授 (20140642)
児玉 英也 久留米大学, 医学部, 助教 (30758834)
佐藤 守 久留米大学, 付置研究所, 講師 (60529478)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | フレイル / 介護予防健診 / 特定健診 / 特定保健指導 / 重症化予測AI / 糖尿病 / 慢性腎臓病 / 認知症 |
研究実績の概要 |
超高齢社会であるわが国において、健康寿命の延伸は喫緊の課題の1つであり、そのためには生涯にわたる予防・健康づくりの推進が重要である。健康寿命の延伸や介護予防の阻害因子として、生活習慣病やロコモティブ・シンドローム(ロコモ)、認知症等のフレイル対策が重要だが、保健行政など実施主体が別であり、一次・二次・三次予防の観点から途切れない取り組みを実践するための連携体制の構築が課題である。 久留米大学は、2019年11月12日に佐賀県基山町と健康・福祉推進、産業振興、教育など包括的連携協定を締結した。その1つに基山町が抱える糖尿病、慢性腎臓病と、透析患者の増加、高齢化率の進展と独居高齢者の増加に対応すべく、健康増進計画策定に着手した。KDBデータベース解析として、KDBデータ等のcsv突合データを重症化予測AIにより、ICD-10分類により分類された糖尿病、高血圧、慢性腎臓病等の生活習慣病の各々を、4段階のリスク評価分けを行い、個人毎のデータの見える化を図り、個人のリスクに応じた支援体制の構築と、データヘルス計画策定を目的とした取り組みを開始した。 また高齢者においては、ロコモやうつ、もの忘れなどフレイルチェックは重要であるが、自治体などでも十分に実践できているとは言えない。さらに認知症は、予防や早期発見、早期対応が重要と言われるものの、様々な理由から、早期受診に至りにくく、受診時にはかなり重症度が高いことも少なくない。これらを解決すべく、地域で、上記の突合データの解析と、介護予防検診を行い、これらのデータを一元化し、生活習慣病等の疾病予防と生活機能低下・フレイルを含む介護予防のサービスが一体的に受けられるようなモデル創設を目的とした研究を令和3年度より行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基山町における突合csvデータの解析は、基山町により匿名化されたデータとして、2020年度からは後期高齢者データとの一元的な管理も可能となってきており、既に2020年度(令和2年度)以降のデータ解析を行っている。個人および地域の健康状態のデータ分析を行うことにより、各個人の健康リスク、地域の健康課題を把握して、データを見える化し、健診受診率の向上、生活習慣病予防、重症化予防などの優先すべき課題を明確にし、取り組むべき課題目標を設定する。また、突合データと介護予防健診として、認知機能、運動機能、高齢者総合機能評価、睡眠評価などからなる包括的な検査体制を整え、突合csvデータとの一元化を図っていく。 介護予防健診を地域で普及していくためにも、基山町で毎年開催されている「(基山町)ふ・れ・あ・いフェスタ」のイベント会場において、令和3年度令和4年度と介護予防健診の体験会を行った。 2021年度からの介護予防検診については、対象者を70歳および75歳の人口約500名の高齢者としており、その内容としては、高齢者総合機能評価としての基本チェックリスト、ロコモ25、EQ-5D(QoL)、アテネ不眠尺度や、スクリーニングとしての認知機能検査としてHDS-R及びMMSE、運動機能評価としてロコモ度テスト(立ち上がりテスト、2ステップテスト)、CS-5、歩行速度(最速、通常)、握力、そして血圧や身長・体重含めた体組成計、骨密度、オージオメトリーを用いた聴力検査を実施している。 令和3年度4年度は概ね4割の方が受診されており既に400名を超えた計測を完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
突合csvデータによる重症化予測AI評価システムと今回新たに実施する介護予防健診により、これらのデータを個人ごとに見える化し、フィードバックするとともに、個人のリスク段階に応じた、受診勧奨や、保健指導、重症化予防対策につなげる。 介護予防健診のデータと突合csvデータを一元的管理により、個人ごとのリスク評価と、地域全体の健康課題について検討し、新たな健康増進計画の作成につなげられる取り組みにしていく。 介護予防健診から得られた結果からは、運動機能、認知機能などそれぞれ、リスクに応じて既存の介護予防事業や高齢者の集いの場でも様々な健康につながる仕組みを構築していく。 さらには突合csvと介護予防健診の結果を一元化することで、生活習慣病と運動機能、将来的には生活習慣病と認知症などとの関連性について前向きコホート研究として実践できるような取り組みにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
引き続くコロナ禍の影響で、直接出向く機会を失い実質的な支出が減ってしまっていたが、状況の変化を受け、協力機関との連携を密にとれる状況となった。 また研究成果の発表準備に向けて学会参加や論文作成の準備に取り掛かる予定である。
|