研究課題/領域番号 |
21K02070
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
黒瀬 光一 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30280754)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 代替法試験 / 免疫原性試験 / アレルギー |
研究実績の概要 |
我々が開発した改良型h-CLAT法をさらに改良するべく、THP-1細胞に対する被験物質の曝露時間の短縮化を試みた。まず、感作性物質8種、非感作性物質4種の計12種について、曝露時間を従来の24時間から3時間に短縮し、細胞生存率が75%となる試験濃度(CV75)を求め、12種のうちCV75が得られた感作性物質3種、非感作性物質1種について、従来の感作性マーカー7種を指標に感作性評価試験を行った。その結果、7種のマーカーはいずれも感作性物質特異的な発現誘導を示さなかった。このことは曝露時間の短縮化には新たな感作性マーカーの探索が必要であることを示唆しており、今後、RNA-Seq解析による新規感作性マーカー遺伝子の探索を行う予定である。 一方、化学物質の代謝活性化による感作の発現を検出可能にするために、代謝活性化に関わるcytochrome P450(CYP)分子種とP450 oxidoreductase (POR)とを安定的に共発現するTHP-1細胞株の樹立をめざし、まず、CYP1A1とPORのcDNAを、Episomal発現 Vector であるpEBMulti-NeoとpEBMulti-Hygにそれぞれサブクローニングした。なお、塩基配列を調べたところ、POR cDNAには活性低下をきたす変異が存在していたので、Site Directed Mutagenesis法により変異を取り除いた。次いで、PORをTHP-1細胞にて安定発現させるために、上記で作成したPOR発現プラスミドをリポフェクション法によりTHP-1細胞にトランスフェクションし、Hygromycin選択培地にて培養し、POR安定発現株の樹立を試みた。トランスフェクション条件を様々検討したが安定発現株は得られず、現在、エレクトロポレーション法による安定発現株の樹立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、新規感作性マーカーとしてのより適切な遺伝子の選出に至っていない。また、化学物質の代謝活性化に関わるCYP分子種とPORとを安定的に共発現するTHP-1細胞株の樹立に至っていないので、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 網羅的なmRNA-Seq解析を用い感作性物質に対して特異的に発現誘導される遺伝子の探索を行う。感作性マーカー遺伝子には、被験物質の曝露時間の短縮に適したものを選出する。まずは代謝活性化を考量する必要ない20種程度の既知の感作性・非感作性の化学物質を用いて、感作性評価基準を定める。 2. CYP分子種およびPORを安定共発現するTHP-1細胞株の樹立する。樹立したCYP/POR安定発現THP-1細胞株を用いて、まずは数種類の既知の代謝活性化する化学物質を正しく評価できるのか否かを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: mRNA-seq解析を行えなかったこと、機器の購入がなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 使用計画: mRNA-seq解析を行う予定であることのほかは、当初の使用計画に大きな変更はなく、使用費目は物品費、旅費等、本研究遂行において必須の経費である。消耗品に関しては、実験のための試薬や培地とチューブやプレートなどの実験器具の購入に充てる。
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