研究実績の概要 |
本年度は「FBGセンサの生体への設置圧力と計測される信号の大きさの関係の検証」について実施した.FBGセンサを被験者の橈骨動脈点に設置するとともに,FBGセンサと干渉しない隣の部分に小型圧力センサを設置した.両センサを手首に押し付けるように他方の手の指で押し込むことでFBGセンサの設置圧力をかけながら脈動ひずみ信号を計測した. このとき,設置圧力が小さい場合には脈動ひずみ信号のピークが縦軸方向において+側(上向き)の信号が計測され,圧力が大きくなるにつれて信号ピークが長くなることが示された.しかし,さらに圧力を大きくすると信号ピーク長さが減少して消失してしまい,その後は縦軸方向において-側(下向き)の信号が計測された.以上より,FBGセンサの設置圧力によって計測される信号形状が大きく影響することが示された. この原因として,脈動時にかかるひずみの大きさと信号のベースラインとなる設置圧力の関係が考察された.上向きの信号とはベースラインよりも脈動時にかかるピーク点が大きいことを示し,言い換えると設置圧力よりも脈動時にかかるひずみが大きいこととなる.一方,設置圧力が大きい場合には設置している時点でFBGセンサがひずんだ状態となるためにベースラインが上昇し,設置圧力が大きいことで動脈が生体内部方向に沈められるため脈動ひずみの大きさ自体も小さくなる.以上より,FBGセンサを設置する際には最適な圧力値が存在することが明らかとなった. この最適設置圧力値を調査するために,同様の実験において設置圧力を0, 5, 10, 15, 20 kPaの5条件で6名の被験者について検証した.その結果,10-15 kPaで最もピーク長さが長くなる信号計測される傾向が示された.これは,収縮期血圧値に近い結果であり,最適設置圧力値は収縮期血圧と関係していると考察された.
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