本年度は「どのような手首の状態でFBGセンサを設置するかの検証」および「光ファイバ型のひずみセンサであるFiber Bragg Grating (FBG) センサが挿入された繊維製品の開発」について実施した。さらに、脈動ひずみ信号がより大きなピークとして検出されるためのFBGセンサの初期設置条件について検証した。 手首を曲げるまたは後方に反ることにより手首の角度を30度ずつ変化させた状態で、超音波断層画像計測により生体表面から橈骨動脈までの距離を計測した。その際、手首が後方に反る角度が大きくなるほど橈骨動脈が生体表面に近づくことが確認され、各90度で後方に反る形状が最も生体表面に近づいた。これらの各角度においてFBGセンサで脈動ひずみを計測したところ、後方に反る角度が大きくなるほど上向きで大きなピークが計測された。つまり、脈動ひずみをより大きなひずみとして計測していることが認められ、高感度で計測できることが示された。 橈骨動脈の脈動ひずみは心臓の拍動が動脈を伝搬してきたものであり、循環器の生体情報を含んでいる。この動脈ひずみをFBGセンサで計測すると、脈拍数、血圧、血糖値の測定が可能になると期待される。しかし、手首は関節でありその関節が動くと周囲長が変化する。周囲長が変化してもFBGセンサが脈動点に設置し続けるためには、FBGセンサが埋め込まれた繊維製品にはその周囲長変化に対応できる伸縮性が求められる。繊維製品には伸縮性が存在するが、光ファイバは伸縮性が皆無である。そこで、光ファイバを波上パターンで繊維製品へ挿入することを考案し、その際の最適な波の周期長とサイクル回数を検証した。その結果、周期長50mmかつサイクル回数4回で、手首の周囲長約200mmに対応した伸縮性があり橈骨動脈ひずみを計測できる繊維製品が開発された。
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