研究課題/領域番号 |
21K02073
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
島田 昌也 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (10576755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 果糖 / IL-25 / 脂肪酸合成 |
研究実績の概要 |
過剰な果糖の摂取は短期間であっても肝臓の脂肪酸合成系経路の活性化やトリアシルグリセロール(TAG)の蓄積を促進し,単純性脂肪肝を発症する。このような脂肪肝が発症した際にTh2型免疫に関与するIL-17BあるいはIL-25の受容体IL-17RBの発現が著増するという新規知見をすでに得ている。そこで,デンプンを豊富に含む対照食あるいは果糖を豊富に含む食餌(高果糖食)をラットにそれぞれ与え,それと同時にIL-25の組換えタンパク質を直接投与し,肝臓脂質代謝に及ぼす影響を検討した。対照食を摂取させたラットにIL-25を投与したところ,肝臓のTAG蓄積および肝臓脂質代謝関連遺伝子の発現に対してほとんど影響を及ぼさなかった。一方,高果糖食を摂取させたラットでは,IL-25の投与により肝臓のβ酸化系酵素の遺伝子発現には影響を与えず,肝臓の脂肪酸合成系酵素の遺伝子発現および活性ならびにTAG蓄積を低下させた。さらに,これらの低下には,主要な脂肪酸合成系転写因子SREBP-1cおよびChREBPの双方(特にChREBP)によって制御されていることを示唆する非常に興味深いデータを得た。ChREBPはヒストンアセチル基転移酵素CBPと相互作用しヒストンアセチル化の亢進に関与することから,果糖誘導性脂肪肝に対するIL-25の予防作用には,ヒストンアセチル化の抑制を介した脂肪酸合成系の遺伝子発現の低下が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th2型免疫に関与するIL-25の直接投与が果糖誘導性脂肪肝,特に脂肪酸合成系経路を予防することが明らかになり,この成果を論文化できたため。
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今後の研究の推進方策 |
果糖誘導性の単純性脂肪肝発症およびそれが予防された際に,脂肪酸合成系遺伝子のgene bodyにおける転写伸長促進因子(BRD4,P-TEFb,PolⅡなど)がどのように変動するかをin vivoで検証を進めていく方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回生じた次年度使用額は,本試験用の試薬(転写伸長因子の結合解析用)を購入するために使用する予定であった。しかしながら,これは新たな解析項目であり予備実験が必要であるため,予備実験で使用する試薬の費用にとどめた。 翌年度は上記の本試験用の試薬を購入する費用として使用する計画である。
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