研究課題/領域番号 |
21K02085
|
研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
岡崎 貴世 四国大学, 生活科学部, 教授 (10227738)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ねさし味噌 / ムコール / 発酵食品 / 大豆麹 |
研究実績の概要 |
徳島県で古くから伝統的な製法で作られている「ねさし味噌」は、一般的な味噌とは大きく製造方法が異なり、麹カビ(Aspergillus oryzae)とは異なる種類のカビであるムコール(Mucor plumbeus)が利用されている。本研究では、ムコールの微生物学的な特性を明らかにしつつ、ねさし味噌の発酵過程を解明し、さらに、ねさし味噌由来の発酵微生物を用いて「新しい麹(ムコール麹)」を調整し、新規大豆発酵食品の開発の可能性を検討する。 2021(令和3)年度は、ねさし味噌の製造過程を明らかにするため、熟成過程にある味噌の微生物検査および理化学検査を行った。ねさし味噌は仕込み後から1年の間に、多種類の微生物が検出された。このためねさし味噌の発酵にはムコールだけでなく乳酸菌や酵母も関与していることが示唆された。また乳酸菌の検出菌数の増加とともに酸度の上昇およびpHの低下が認められた。味噌の色調は、一般的な味噌と同様、熟成期間とともに暗く変化した。 また製造に関与するムコールの微生物学的特性について測定した結果、25℃から30℃で生育速度が速く、35℃では生育しないことがわかった。ねさし味噌は冬の寒い時期に仕込む「寒仕込み」であり、この昔ながらの製法がムコールの生育に適した方法であったことがわかった。さらに、ムコールは5%NaCl存在下で増殖することが確認された。ムコールの酵素活性は、3日培養で調整した大豆麹で測定を行った。比較として測定した麹カビで調整した大豆麹では高いα-アミラーゼ活性が検出されたが、ムコールで調整した大豆麹は活性が検出されず、7日培養した大豆麹も同様であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021(令和3)年度は、ねさし味噌の製造(熟成)1年目の微生物検査および理化学検査を行った。また製造に関与するムコールの微生物学的特性と製造過程における酵素活性を測定した。研究計画通り実施できているため、研究達成度は「おおむね順調」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ねさし味噌の熟成期間は3年間である。2022(令和4)年度も引き続き、製造(熟成)2年目の味噌の微生物検査および理化学検査を行う。また、徳島県内の他の醸造所のねさし味噌を調査し、製造方法や味噌の特徴について相違点を明らかにする予定である。味噌の特徴として、発酵に関与する微生物の種類、塩分濃度や酸度などの理化学的特性に加え、官能的特性として味や匂いを調査する。特に味噌の匂いに注目し、製造方法や発酵微生物の違いによって、どのような影響を受けるのか検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021(令和3)年度は、研究機器(オートクレーブ)の故障により、当初予定していた設備備品の購入を見送り、予定外の機器を購入したため研究使用額に差が生じた。また新型コロナウイルス感染症のため、関連学会の年次大会がオンライン開催となり旅費への支出が不要となった。その他の研究費は、ほぼ予定通り支出できている。2022(令和4)年度は、県内のねさし味噌醸造所を訪問し、製造方法等の聞き取り調査に支出する予定である。
|