研究課題/領域番号 |
21K02087
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研究機関 | 公益財団法人鉄道総合技術研究所 |
研究代表者 |
川崎 たまみ 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 人間科学研究部, 主任研究員 (60426145)
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研究分担者 |
嶋崎 典子 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (80466193)
吉江 幸子 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 人間科学研究部, 主任研究員 (20386626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウイルス動態 / 鉄道等の公共設備 / 感染症対策 / 室内環境 / 床材 / 空気質 / 環境衛生 / ファージ |
研究実績の概要 |
本研究では、鉄道をはじめとした公共設備等の床をモデルとし、人の利用等に伴う床上の模擬ウイルス飛沫の空間中への飛散・浮遊、壁面等への再付着、及び床上での残存等に関する基礎的知見を得ることを目的とする。昨年度に引き続き、公共設備等で一般的に使用されている床材の微生物に対する基礎的な特性を把握することを目的に、本年度は、硬性床材の代表的な3種類の試験片に対し、以下の①②③④の実験を実施した。また、⑤については、昨年度使用した弾性床材に対しても併せて実施した。①接触角測定の結果、試験片Cにて、ミリQ水、培養液を滴下した際の接触角が、有意に試験片Aより大きく、試験片Bでは、表面の液滴の広がりが著しく接触角を測定できなかった。 ②塗布直後の細菌(Acinetobacter属)回収率を、生菌数を指標として測定した結果、対照を含んだ試験片間で有意差はなく、弾性床材試験片の回収率と比べて低い傾向がみられた。③24h接触後のSARS-CoV-2(以下、ウイルス)回収率は、試験片A、Bにて回収率が低い傾向がみられた。回収率が低かった理由としては、試験片表面のウイルス吸着又は未知の抗ウイルス成分による影響等が考えられる。④細菌回収率とウイルス回収率の差をみると、試験片Cでは22%ptであったのに対し、試験片A、Bでは、63%pt~74%ptと差が大きかった。これらのことは、試験片A、Bの表面に、細菌よりもサイズが小さいウイルスが吸着されやすい性質に起因する可能性、あるいは接触時間の違いが考えられる。一方、試験片A、Cの接触角とウイルス回収率の間には、高い正相関がみられた。これらの結果から、細菌よりもウイルスのほうが、より床材表面の構造や材質による吸着の影響を受けやすい可能性が考えられた。⑤模擬ウイルス候補であるバクテリオファージφ6を用いた弾性床材・硬性床材からの回収率測定実験にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021、2022年度にて、弾性床材と硬性床材の6試験片に対し、①接触角、②SARS-CoV-2については感染価と回収率、③細菌については回収率、とそれぞれの基本的な回収特性を把握した。またバクテリオファージφ6を用いた各試験片からの回収率測定試験にも着手したことからも、2022年度はおおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、チャンバー内に、模擬ウイルス候補としてバクテリオファージφ6を塗布した弾性床材・硬性床材試験片を設置し、試験片上における人の動き等を模擬した際の、試験片上におけるバクテリオファージφ6の残存量やチャンバー空間内における飛散量等を測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、模擬ウイルスとして「空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験方法」((一社) 日本電機工業会))で用いられているエンベロープを有さないファージを使用したチャンバー実験を計画していた。しかし、エンベロープを有するバクテリオファージφ6がSARS-CoV-2の模擬ウイルス候補として使用された報告がみられるようになった。このことを踏まえて、本研究においても、バクテリオファージφ6を用いた試験系を構築し実験データを得ることにより、より学術的にも価値の高いエビデンスが得られると考えた。そこで、2022年度内に、バクテリオファージφ6を利用した各種試験片からの基本的な回収率特性を把握する実験を行い、2023年度にチャンバー試験を行う計画変更を行った。
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備考 |
2022年12月 2022年室内環境学会学術大会大会長奨励賞 受賞
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