研究実績の概要 |
本年度の研究では, CuI染色によってNylon繊維やNylon/AgI繊維と密度差を付けたトレーサー繊維(Nylon/CuI繊維)を作製し,2種類のトレーサー繊維を用いて作成したNP不織布の構造を解析することで,試料内で異なる位置に在った繊維がそれぞれどの位置に移動し,形成される杭状繊維束やStitch構造にどの様に影響するのかを調べた. 1層目をNylon/CuI繊維層, 2あるいは3層目をNylon/AgI繊維層, それ以外をNylon繊維層とした4層からなるウェブを, 針深度19.0 mm, 針密度40 punch/ cm2の条件でパンチングしNP不織布を作製した. X線CT装置を用いて分解能5μm/pixelの撮像条件で不織布を撮影し,各トレーサー繊維の3次元像及び厚み方向への繊維体積分率を算出した. NP不織布中の2種類のトレーサー繊維のみを可視化でき, トレーサー繊維層及びNPによって形成された杭状繊維束やStitch構造中の2種類のトレーサー繊維を区別できた.これにより2種類のトレーサー繊維を併用することで, NPにより各トレーサー繊維層から移動した繊維の形態や移動位置の同一試料内での比較, 各層の繊維が他の層に及ぼす影響についての調査が可能になった. また, Stitch構造が形成される不織布底面部の繊維群において, 1, 2層の繊維は同じ位置に混在いているのに対して, 1層目のトレーサー繊維と比較して3層目の繊維がより底面側に移動した. パンチング回数が増すと, すでに杭状繊維束を形成した箇所の上面にパンチング孔が生じ,その部分を針が通り抜けるため3層目の繊維がニードルに保持される可能性が高くなる.この3層目の繊維が,すでに1, 2層が形成したStitch構造を貫通後に針から外れることで, このStitch構造の下側に移動したと考えている.
|