ユニットケアは「相互に社会関係を築き自律的な生活を営む」「役割をもって生活を営む」「入所前の生活との連続性を図る」等を目指して制度化された。しかし、今、ユニット型特養においては、入所者の重度化、スタッフ不足等によって、入所者の社会関係を維持することが難しくなっている。本研究では、居住環境整備がなされた空間のなかで経年により生じた施設入所者の居住性の課題に対して、ケアによる解決策を示そうとしている。 R5年度は、まず、「A.ユニット型特養を対象とした調査」として、特養のスタッフに対してヒアリング調査を行った。ユニット型空間のメリットやデメリット等について把握したところ、コロナ禍の空間の使用方法に関する回答が多く、時期的な回答傾向だと推察された。また、コロナ禍の感染予防策によって入所者の社会関係は希薄になっていた。アフターコロナにおいて、入所前からの関係性、スタッフと入所者の関係、入所者同士の関係の構築については再検討が必要である。 次に、入所者の家族関係を維持するという目的で計画した「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」を、「B.家族研修」(R3、R4実施)に続いて行った。その結果、スタッフと入所者の間に家族の存在があることは、支援者と被支援者が相互的関係に変容する可能性があった。 さらに、「C.地域ケアネットワーク」に対する調査(R3、R4実施)から析出した社会関係の課題、すなわち入所前の段階から要支援・要介護者は就労を含む社会関係から離脱している状況に対して、新たに社会参加への介入を試行した。 R5年度は最終年度として、ユニット型特養入所者を中心に、高齢期および家族介護者の社会関係をサポートする必要性を析出し、市民の社会参加による地域づくりへの足掛かりを得た。
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