研究課題/領域番号 |
21K02092
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
金丸 芳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (00243676)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 志賀毒素 / O157 / 難消化性成分 / 吸着 |
研究実績の概要 |
腸管出血性大腸菌O157の感染予防や症状軽減に,Gb3アナログなどの志賀毒素吸着剤が期待されている。しかし,様々な食品由来成分が吸着活性を有すれば,安価で常食による予防等にも繋がると期待できる。そこで,腸管出血性大腸菌O157が産生する志賀毒素(Stx)を吸着除去する難消化性食品成分を見出し,その活性成分を分離した。使用したStxはE. coli O157 sakai株を培養して調整した。粗抽出Stxをカラム法でStx1とStx2に分離精製して実験に用いた。サンプルとした野菜類や海藻類は,凍結乾燥して粉砕し,熱水抽出液を作製して,吸着活性を検討した。その結果,海藻類ではアラメ,スジアオノリ,ヒジキ,ワカメ,ミリンソウに,野菜類ではオクラ,レンコン,ヤマイモに強い吸着活性が見られた。そのうち,顕著な吸着活性があったアラメとスジアオノリについて,活性成分をエタノール分画,イオン交換クロマトグラフィー等で分離精製し,その構成糖,硫酸基量,分子量を調べた。アラメの活性成分は約400 kDaのフコイダン,スジアオノリの活性成分は約1300 kDaのラムナン硫酸であった。アラメ由来フコイダンおよびスジアオノリ由来ラムナン硫酸がStxを吸着することにより,結腸ガン細胞CACO-2細胞に対するStxの毒性は軽減することを確認し,吸着除去能が確認された。また,スジアオノリ由来ラムナン硫酸については,以前,吸着能を見出したウスバアオノリ由来のラムナン硫酸と比較すると,その吸着活性には差があり,構成糖の比率や硫酸基量,分子サイズが異なるためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回,食品抽出液によるStx吸着活性の測定方法を確立させることができた。そして,吸着活性を指標とした食品抽出物のスクリーニングが進み,その中で,強い活性を有する食品が数種確認できた。さらにそのうちで2つの海藻について,活性成分を明らかにした。計画している研究はおおむね順調に進んだ。だだし,活性成分の単離の効率が芳しくなく,多量の活性成分を一度に得ることが難しい状態である。そこで,現在,その単離方法の改善を試みている。活性成分を多量に確保することが,今後の研究に関わるため,課題と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後,ラムナン硫酸とフコイダンについては,Stxとの結合様式の検討,分子構造の差異による吸着能の検討を行う。さらに,志賀毒素の結合性に与える環境要因について検討する。今回,吸着活性が見られた食品抽出物のうち,活性成分を明らかにしていないものについて,活性成分の解析を行う。また,今回検討した以外の食品由来成分について吸着活性をスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に購入予定であったGPCカラム30万円,PLキャリブレーションキット36万円,遠心分離機のローター24万円(計90万円)が年度内に購入できない事態となったため,次年度使用額が生じた。上記の予定購入品については2022年度に購入の予定である。
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