研究実績の概要 |
毎年発生しているアレルギー様食中毒は、ヒスタミンの多量摂取が原因となっており、加熱による対策ができない事が課題となっている。そこで新たな対策として、すでに蓄積した食品中のヒスタミンを無毒な形に分解し除去する方法を検討した。ヒスタミンの分解には植物由来のヒスタミン分解酵素を利用し、植物のペーストまたは植物から抽出した酵素を食品に塗布する処理の効果を調べた。豆苗と0.1 Mリン酸Na緩衝液(pH7.4, 200 mM NaClを含む)を混合してホモジナイズ後、遠心分離して得られた上清を硫安分画し、硫安飽和40-60%画分から粗酵素液を得た。赤身魚を高濃度ヒスタミン溶液に浸漬して作成した約200 ppmのヒスタミンを含む試料に、粗酵素液を添加して反応後の試料中ヒスタミン量をHPLCにて定量した。25℃で24 h反応させたところ、最大87.1%のヒスタミン減少が確認されたことから、低体重でヒスタミン許容量が低い幼児や、ヒスタミンの分解機能等に異常を持つヒスタミン不耐症患者においても、食中毒が防止できる濃度まで赤身魚中のヒスタミンを分解できる可能性が示唆された。十分量の安定な酵素液を得るために精製を硫安分画までに留めたが、より効率的にヒスタミン量を減らすためには酵素液のさらなる精製が必要であると考えられた。より効率的な豆苗からのヒスタミン生成酵素の精製法が確立できれば、より多量のヒスタミンを変換させられ、より食中毒予防に役立てられると考えられた。
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