研究実績の概要 |
近年、味噌の栄養学的利点の一つとして、味噌に備わる抗酸化能が注目されている。味噌の抗酸化能は様々な要因により決定されることが考えられるが、本研究では、味噌の抗酸化能が、大豆と麹の配合割合または熟成期間(反応時間)にどのようにかかわっているか明らかにすることを目的とした。2021年度は、糖-アミノ酸反応モデル系、味噌の活性酸素消去活性の測定系の構築ならびに、市販味噌での抗酸化能の測定を行った。さらに、熟成期間における影響を検討するための味噌の製造を行った。 研究方法は、糖-アミノ酸反応モデル系では、糖類としてグルコース、アミノ酸としてグリシンを用いて、反応溶液(酢酸ならびに炭酸水素ナトリウム)中で、90℃、7時間反応させてメラノイジンの生成条件の検討を行った。市販味噌として、米味噌、麦味噌、大豆味噌などを用いて、これらの抗酸化能の測定を行った。抗酸化能は、電子スピン共鳴装置(JES-FR30EX,日本電子(株))を用いてスーパーオキサイドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカルを測定した。さらに、メラノイジンの分取系の構築のために高速向流クロマトグラフ(Easy-PREPccc,クツワ産業(株))を用いて検討した。使用溶媒は、n-ブタノール、エタノール、飽和硫酸アンモニウム、水の二相溶媒系4種類を用いた。 研究結果は、糖-アミノ酸反応モデル系では、アルカリ溶液においてメラノイジンの生成速度が速かった。活性酸素消去能の測定においては、有意な差はみられなかった。市販味噌の測定においては、大豆味噌において消去活性が高かった。特に、ヒドロキシラジカル消去活性が他の味噌に比べて高かった。高速向流クロマトグラフの測定においては、分離分取が可能になり、数種類の物質の生成が認められた。
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