研究課題/領域番号 |
21K02106
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山崎 健 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (50510814)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 古代 / 古墳時代 / 食 / 動物遺存体 / 動物利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、遺跡出土の食料残滓を分析するとともに、出土した食料残滓を集成して、古代における食生活の実態を明らかにすることである。 今年度は、奈良県にある西大寺食堂院の井戸から出土した動物遺存体を分析した。食堂院とは僧侶が寺院で食事をする場所である。井戸からは箸・杓子などの食事具、皿・椀などの食器、植物種実などの食料残滓、食材や食料の進上・保管・支給に関わる木簡など当時の寺院における食生活がうかがえる食堂院らしい遺物が数多く出土しており、遺構と遺物が直結した一括性の高い資料群と評価されてきた。分析の結果、コイ科、サケ科、ボラ科、マイワシ、アジ科、サバ属、カサゴ亜目といった魚の骨も出土していたことが明らかになった。西大寺食堂院の井戸から出土した遺物は一括性の高い資料群であるため、多様な魚類が寺院で消費された可能性は十分に考えられる。日本最古の仏教説話集である『日本霊異記』下巻第六縁には鯔(ボラの幼魚)を食べた僧侶の話があり、「僧侶の魚食は許されない」という一般的な考え方とともに、「病気の養生であれば僧侶でも魚を食べて構わない」という条件付きの容認という考え方が認められる。寺院における食の実態を示唆する非常に興味深い成果が得られた。また、同じ井戸からはドブネズミやアカネズミといったネズミの全身骨格がまとまって出土しており、ネズミが食堂や食料貯蔵施設のある食堂院周辺に生息していた可能性がある。 得られた成果については、分析結果の基礎データを報告した上で、『BIOSTORY』36に寄稿した。また、オンラインのシンポジウムや研究例会で講演をおこない、研究成果の社会還元や普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた調査を制限せざるを得なかったが、その代わりに出土資料の分析を着実に進めることができた。また、オンラインで研究成果を発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
古墳時代~古代における出土事例の集成を継続的にすすめるとともに、出土資料の分析を着実に実施して、研究成果を発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた調査を制限せざるを得なかった。次年度は現地調査を慎重に検討したい。
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