研究課題/領域番号 |
21K02106
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山崎 健 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (50510814)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 古代 / 古墳時代 / 食 / 動物遺存体 / 動物利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、遺跡出土の食料残滓を分析するとともに、出土した食料残滓を集成し、古代における食生活の実態を明らかにすることである。 今年度は、古代におけるネズミの食害を検討するために、奈良県にある西大寺食堂院の井戸からネズミとともに見つかったモモ核の食痕を調査した。東大寺の写経所では経典名などが記された札がネズミに齧られたという記録が残っており、実際に正倉院文書の題籖には小動物が齧ったような欠損が確認されている。 昨年度の調査で、西大寺食堂院の井戸からは8匹分のネズミの骨が見つかった。1匹はアカネズミ、7匹は大型のクマネズミ属で、種の判明した骨がすべてドブネズミであった。今年度、ネズミとともに見つかったモモ核1,700個体(1/2以上残存)を調査した結果、53個体(3.2%)に穴があいていた。ほとんどの穴は核の側面にあいており、穴の周囲には溝状痕跡が集中していた。溝状痕跡の幅は0.2~0.3mmが多かった。 こうした特徴から、モモ核にあいた穴は、生薬となる種子(桃仁)を取り出した人為的な痕跡ではなく、ネズミの食痕であると判断した。溝状痕跡の幅から、アカネズミの食痕である可能性が高い。骨はドブネズミが多く出土したが、モモ核を齧っていたのは主にアカネズミであった。ただし、野ネズミであるアカネズミに比べ、家ネズミであるドブネズミの食痕研究はフィールドサインを含めてほとんどないため、次年度以降に実験を実施して、ネズミの大きさと痕跡の関係をさらに検討していく予定である。 また、これまで得られた古代の食に関する成果を『季刊考古学』に寄稿した。さらに研究成果をわかりやすく伝える方法も議論することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた調査を一部制限せざるを得なかったが、出土資料の分析を着実に進めることができた。また、これまでの研究成果を寄稿することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
古墳時代~古代における出土事例の集成を継続的にすすめるとともに、出土資料の分析を着実に実施して、研究成果を発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者として参加する他の科研の共同研究と連携したことにより、経費を抑えることができた。今年度は延期せざるを得なかった調査を実施していく。
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