研究課題/領域番号 |
21K02109
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉崎 由美子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (80452936)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | β-ダマセノン / サツマイモ / 前駆体 / 橙系果肉 / カラムクロマトグラフィー / 小仕込み試験 / 酵素添加 |
研究実績の概要 |
橙系果肉サツマイモ品種に含まれると予測されるコガネセンガンとは異なるβ-ダマセノン前駆体物質の単離を試みた.蒸煮サツマイモのエタノール抽出液をヘキサンを用いた液―液抽出により,水層とヘキサン層に分け,水層に含まれるβ-ダマセノン前駆体物質をSEPABEADカラムクロマトグラフィー,ODSカラムクロマトグラフィー,ゲルろ過カラムによる分画を進めた.さらにHPLCを用いたODSカラムクロマトグラフィーにより最終分画を行った.HPLCを用いたカラムクロマトグラフィーにおいて,なかなか精製がうまく進まなかったことから,前駆体が予想とは異なる構造をしていることが考えられた.そこで橙系果肉サツマイモ品種を用いて様々な条件で小仕込み試験を行った.細胞壁分解系の酵素製剤より24種を用いて橙系果肉サツマイモによる芋焼酎の製造を行ったところ,Aspergillus 属由来のペクチナーゼにβ-ダマセノン生成量を増加させる活性が高いことが認められた.また蒸留時のもろみpHが低いほど,蒸留時間が長いほど,焼酎中のβ-ダマセノン量が増加することが確認された.このpHおよび蒸留時間に関する挙動は,これまでに我々が単離しているCompound 1と同じものであった.これらのことからおそらく橙系果肉サツマイモ品種に含まれるβ-ダマセノン前駆体物質もCompound 1と同様の配糖体であることが強く示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は,橙系果肉サツマイモ品種に含まれると予測されるコガネセンガンとは異なるβ-ダマセノン前駆体物質の単離を試みたが,予想とは異なる性質が確認され,精製を一旦中断した.新しい検証を行いながら,前駆体物質の構造情報の取得を行った.
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今後の研究の推進方策 |
次年度には,精製について新たな方法を検討し,精製を完了する.最終的には構造解析を行う.また同定した成分のサツマイモにおける定量解析を進める.サツマイモの品種違いや,葉・茎・根・塊根などサツマイモの部位別前駆体量を比較する.さらに,サツマイモの収穫時期と前駆体の蓄積量との関係についても調べる.サツマイモ植物体内における蓄積メカニズム解明のための基礎知見を集める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に前駆体物質のNMRなどによる構造解析を実施する計画であったが,単離に至らなかったことから,研究計画を修正し,異なる手法を用いて前駆体物質の構造情報の取得を試みた.その結果,差額が生じた.2023年度にNMRによる構造解析を実施する計画であり,1年遅れたが,当初の計画内容で使用する予定である.
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